春日市の奴国史跡めぐりと博多温泉
西鉄に揺られて春日原へ。ホームで見かけた、田んぼの中をゆく観光列車を横目に、まずは春日公園へ。ランナーと散歩の人、少年スポーツの歓声でにぎわう、気持ちのいい朝だ。すぐそばの春日神社は、奈良時代の創建と伝わる古社——大楠のしげる杜が、「春日市」という名前のもとになった。手水舎には手まりの花飾りがびっしり下がって、ひと足早い春が咲いていた。
小腹を満たしに、いろんな国のパンが並ぶパン・ナガタ本店へ。桜島の溶岩を積んだ石窯で焼いたパンは香ばしく、イチゴのメキシカンにバゲットを抱えて、いよいよこの日の本丸・奴国の歴史めぐりへ。無料とは思えない奴国の丘歴史資料館では、棒の先にはめて槍にしたという鋭い銅矛に見入る。春日市は、かつて奴国の中心地で、青銅器づくりの一大拠点だったのだ。戦時中や米軍基地時代の春日をたどる昭和の企画展も、こじんまりしながら面白い。
資料館を出れば、そこはもう完全な住宅地。「ここが王墓?」と二度見するような路地のまん中に、奴国の王都・須玖岡本遺跡があった。かつて王墓に蓋をしていたという大石が木陰に横たわり、少し歩けば、ふたつのドームが発掘された甕棺墓をまるごと守っている。蛹(さなぎ)のような甕棺がそのまま並ぶさまに、二千年の眠りを感じる。咲きはじめの桜に見送られて、奴国の王の墓地をあとにした。
歴史さんぽのしめは、博多温泉で温冷交互浴……のはずが、お目当ての元祖元湯はまさかの日曜定休(´;ω;`)。すぐ近くの富士の苑へ切りかえる。狭いけれど人気の湯で、浴槽の奥には一番風呂のかけ流しの熱湯。マンションから丸見えのおおらかさに笑いながら、さっぱりととのった。夜は博多バスターミナルのとりかわ長政へ繰り出して、カリトロの揚げ豚足、塩の鶏皮、味噌ハラミ——どれもうーまーいーぞー🐔。パンとお菓子のおみやを抱えて、まんぷくな春日の一日を閉じた。
奴国(なこく)って?
いまの福岡市南部から春日市あたりにあったとされる、弥生時代のクニ。中国の歴史書『後漢書』には、西暦57年に奴国の使者が後漢へ渡り、光武帝から金印を授かったと記される。江戸時代に志賀島で見つかった国宝「漢委奴国王」の金印が、まさにそれだと考えられている。須玖岡本遺跡の王墓からは、銅鏡およそ30面をはじめ銅剣・銅矛・ガラス製品など大量の副葬品がみつかり、ここが奴国の王都であり、青銅器生産の一大拠点だったことがわかっている。足もとが完全な住宅地なのが、かえって二千年の時間を感じさせる。