行橋市で増田美術館と歴史資料館を巡る
出発は博多駅。階段の壁から、べろんと舌を出したテレサがお見送りしてくれる。まずは腹ごしらえにと、ごぼ天とおにぎりの朝ごうどんをつるり——博多の朝は、やっぱりうどんがしっくりくる。そのまま電車に揺られて行橋へ。冬晴れの駅前では、トゲトゲした屋根の駅舎が青空にすっくと立っていた。
お目当ての増田美術館は、思っていたよりさらにこぢんまり。けれど中身は濃かった。トーナス・カボチャラダムスは、鹿児島生まれ・門司育ち・門司在住の銅版画家。門司の港町と南瓜がとけあった空想世界が、版画とは思えないほど細かく彫り込まれていて、小さな画面に顔を近づけているうちに、すっかり目が疲れてしまった(ヽ´ω`)。お昼は金田家の黒豚もやしラーメン。こんなに泡立ったスープは初めてで、こってりとクリーミーのちょうど中間、濃いのにスッキリして(゚д゚)ウマカー。
午後は町の歴史をひとつまみ。京都郡(みやこぐん)と仲津郡を分ける境界石は、「仲津」といっても中津市とはまるで無関係で、ちょっとややこしい。行橋市歴史資料館では、後藤又兵衛の槍とご対面。赤い稲妻模様の刃がとにかくカッコイイ——黒田長政と反りが合わず出奔した又兵衛は、しばらく行橋の寺に身を寄せ、娘と槍を託して大坂へ向かったのだという。ゆくはし官兵衛くんに見送られ、帰り道には『らーめ♡』に見えるのれんの突撃ラーメンを横目に、おみやの行橋饅頭を抱えて帰途についた。
トーナス・カボチャラダムスって?
展示解説によれば、鹿児島に生まれ、門司で育った銅版画家。ユニークな名前のとおり、作品のモチーフは「門司」と「南瓜(かぼちゃ)」で、港町の記憶と空想がとけあった『空想観光カボチャドキヤ』の世界を描く。南瓜のかたちをした塔や乗り物がひしめく画面は、どこか懐かしく、同時にどこにもない場所。銅版画は、銅板に針で線を刻んでインクを刷りとる技法で、一本一本が手仕事。版画とは思えないほどの描き込みに、近づくほど引き込まれてしまう。
後藤又兵衛と行橋
後藤又兵衛基次は、黒田官兵衛・長政父子に仕えた戦国の猛将。主君・長政と不和になって黒田家を出奔したのち、しばらく行橋あたりの寺に身を寄せたと伝わる。やがて娘と愛用の槍をこの地に託し、自身は大坂へ——大坂の陣で豊臣方として戦い、散った。赤い稲妻模様をあしらった槍は、いまも行橋市歴史資料館に残り、荒々しい武将の面影を今に伝えている。