← 一覧
佐賀 巨石パーク登山と古湯温泉の湯治旅
SAGA · 巨石と湯けむり · 2025 ふゆ

佐賀 巨石パーク登山と古湯温泉の湯治旅

巨岩を踏み、ぬる湯に沈む。師走の佐賀路。

2025.12.20 ▶ 12.21

Days2日間
Dist約32km
Area佐賀・福岡
Top最高 342m

師走の佐賀、福岡から車を走らせて大和町へ。狙いは「巨石パーク」——木々の奥に、見あげるほどの巨岩が続々と立ち現れる山のスポットだ。かえる岩、屏風岩、御船岩、そして御座石。自然の造形とは思えない迫力に、えっちらおっちら登ってきた甲斐があった。駐車場には車が一台もなかったのが、ちょっぴりさみしい。

汗をかいたあとは、川ぞいの古湯温泉へ。ぬるすべの柔らかいお湯にとっぷり沈み、民宿のお膳では佐賀県産の純米酒を飲み比べ、有明海のクチゾコやがばいジューシーな茄子に舌鼓。翌日は松梅の干し柿の里と、肥前一宮・與止日女神社をめぐった。じつはこの神社の上宮こそ、昨日の巨石のひとつ——巨岩信仰の古層と、湯けむりの夜。濃密でまんぷくな、冬の二日間。

1
DAY 1 · 12.20

肥前国庁跡と巨石パーク、古湯温泉泊

旅のはじまりは大和町の肥前国庁跡。かつてここに、肥前の国を治めるまつりごとの中心があった——国庁があって大和政権とつながっていたから「大和」の地名になったのかな、などと想像をふくらませる。土地の名物・白玉饅頭を仕入れて、いよいよ目的地の入口へ。

苔むした鳥居をくぐった先の乙文殊宮は、地元で「もいっさん」と親しまれる文殊菩薩のお宮。山道を五百メートルほど登ったところにある上宮は、別名「落書堂」。お堂じゅうが落書きで埋めつくされ、ペンまで置いてある。呪われた廃墟めいた見た目とは裏腹に、書かれているのは合格祈願ばかり——というのがなんともおかしい。お堂の裏には、御神体だという巨大な磐座。このあたりは昔から、巨岩を神とあおぐ信仰の土地だったらしい。

そこからが本番。歩きやすいけれど案内の少ない長い山道を、大きな谷をひとつ越えてなおも登る。と、森のなかに巨石キタ━━!! かえる岩、屏風岩、御船岩、御座石……自然の石とは思えない造形が続々と現れる。見ごたえ充分でいい汗をかいたのに、駐車場には車が一台もなくて少しさみしい。道の駅でサンドとラム干し柿アイスをほおばり、川ぞいの古湯温泉へ向かう。

15時になると町じゅうにラジオ体操が流れる、のどかな古湯温泉。今夜の宿は、溜まったポイントでとった温泉民宿だ。ぬるすべの柔らかいお湯は、ずっと浸かっていたいほど。夜は佐賀県産の純米酒を飲み比べながら、お膳いっぱいのごちそう。がばいジューシーな茄子に、ずっと食べてみたかった有明海のクチゾコの煮魚——しみじみ旨い。どれもよかったが、多久の酒蔵・東鶴がいちばん沁みた。

移動 約12.0km / 獲得標高 44m

巨石パーク(肥前大和巨石パーク)

佐賀市大和町、山あいに広がる巨石群。かえる岩・屏風岩・御船岩・御座石など、見あげるほどの巨岩が森のなかに点在し、古くは神が宿る磐座(いわくら)としてあおがれてきた。ふもとの乙文殊宮の上宮や、肥前一宮・與止日女神社の上宮も、この巨石のひとつとされる。大和政権以前の巨岩信仰の名残がただよう一帯だ。駐車場から巨石群までは思いのほか険しい山道で、登れる体力のあるうちに訪ねておきたいスポットでもある。

落書堂

乙文殊宮は文殊菩薩をまつり、地元で「もいっさん」と親しまれる神社。知恵をつかさどる文殊菩薩にあやかり、受験や就職の合格祈願に多くの人が訪れる。下宮から五百メートルほど登った上宮が、建物の内も外も合格祈願で埋めつくされた「落書堂」だ。ペンが備えられ、訪れた人が思い思いに願いを書き残していく。大学受験よりも高校受験の願かけが目立つのが、この土地らしいところ。

2
DAY 2 · 12.21

松梅の干し柿と與止日女神社、佐賀市街へ

外はまだ暗いうちに朝風呂を浴び、生卵のついた朝ごはんでお櫃を空にする。この時間でもまだ早朝の気配がのこる古湯の町を抜けて、松梅の干し柿の里へ。もうピークは過ぎていて、柿がすだれのように連なる景色に出会えたのはほんの少しだけ。それでも、オレンジ色のカーテンはやっぱり冬の里の風物詩だ。

川上峡にもどって、昨日スルーした肥前一宮・與止日女神社に参拝する。じつは昨日登った巨石パークの巨石のひとつが、この神社の上宮にあたるのだという。もともと巨石をあおぐまつろわぬ民がいて、その信仰が大和政権に取りこまれて神話になったのでは——と、しめ縄のかかる鳥居の下で古代へ思いを馳せる。

台風並みの寒風のなか、バスで佐賀の中心部へ。維新の志士たちがなぜかダサいビブスを着せられた像に笑い、お昼は寅ちゃんうどんを🍙とすする。富士町の酒米でつくった新酒を仕入れたら、晴れてきたけれど風は強い。天神の渋滞をのろのろ抜けて、夕方に福岡の自宅へ。ただいま。

移動 約20.0km / 獲得標高 27m

與止日女神社と巨石信仰

川上峡のほとりに鎮座する肥前国一宮。欽明天皇の頃の創建と伝わる古社で、祭神の與止日女(よどひめ/淀姫)は水の神ともいわれる。興味深いのは、前日にめぐった巨石パークの巨岩のひとつが、この神社の「上宮」とされること。大和政権以前からこの地には巨岩を神とあおぐ信仰があり、それがのちに神社という形へ受け継がれていったとみられる。古層の巨岩信仰と、律令のまつりごと(肥前国庁跡)が、同じ大和の地に重なっているのが面白い。