福岡から鹿児島市へ移動
旅のはじまりは金曜の夜、福岡。資さんうどんで肉ごぼ天をすする。サクサクのごぼ天と甘めのつゆで、週末の遠出スイッチがかちりと入った。「うどんで1000円超えはブルジョワ」なんて軽口を叩きつつ、鹿児島をめざす。
市内のホテルに荷をほどくころには、すっかり夜。さつま島美人のハイボールで、ささやかな前夜祭。明日はいよいよ霧島、高千穂峰にのぼる——天気予報は、晴れ。
霧島連山周遊バスで高千穂峰登山、京町温泉泊
朝いちの霧島連山周遊バスに飛び乗る。2列シートの観光仕様で、大きな窓いっぱいに新緑の山——1100円で乗り放題なんてオトクすぎる。硫黄の匂いただよう丸尾で乗り継いで、さらに上の高千穂河原へ。バスはガラガラ、人気のえびの高原とは大ちがいだ。
石畳と階段の道をのぼると、お鉢の斜面にぽっと出た——ミヤマキリシマ🌺 ピンクの群落の向こうに、円錐形の高千穂峰。『お鉢キタ━━!!』火口をぐるりと回り込み、砂と砂利に足を取られながら天孫降臨の山頂へ。天ノ逆鉾がぶっ刺さっている。往復4時間弱、1コケしつつも、曇ってなお絶景だった。
下山したら鹿ケ原はミヤマキリシマのお花畑。『お花畑やぁ~』と殿もご満悦。霧島茶ソフトでひんやりチャージして、バスと列車を乗り継ぐ。木造駅舎の嘉例川でひと休み、吉松で乗り換え、今夜の宿は宮崎・えびのの京町温泉。久しぶりのコンテナホテルに荷をほどき、慶民ラーメンの赤い麺と皮の破れる野菜餃子で乾杯。日帰り温泉で、コケた右手のスジを癒した。
高千穂峰と天ノ逆鉾
霧島連山の南東にそびえる標高1574mの火山。山頂には「天ノ逆鉾(あまのさかほこ)」と呼ばれる青銅の矛が突き立ち、天孫・瓊瓊杵尊(ニニギ)がこの地に降り立ったという『天孫降臨』の伝説で知られる。幕末には坂本龍馬がお龍との新婚旅行でこの峰にのぼり、逆鉾を引き抜いた逸話も残る。初夏にはミヤマキリシマが山肌をピンクに染め、火口「御鉢」のダイナミックな景観とともに登山者を迎える。
湧水町・伊佐を巡り新水俣経由で帰宅
コンテナの朝は少し冷える。レンジで温める冷凍弁当を選べるのがR9の気がきくところだ。京町温泉駅で宮崎とお別れして、湧水町へ。底まで透ける湧き水に『湧いちょる湧いちょる』。ツヤツヤの毛並みの野良猫に下僕任命され、島津義弘が朝鮮出兵のとき戦勝祈願したという勝栗神社に手をあわせる。
ローカルバスを乗り継いで、北薩摩のディープな一日。チェーンソーアートの大ダコ、カッパの石像が並ぶガラッパ公園、鎌倉武士を祀る山あいの湯之尾神社、カヌーの浮かぶ川内川、無色透明ぬるすべの菱刈温泉。金山の町・菱刈には、金鉱石をかかげる巨大カッパまで鎮座していてワロタ。湧水米のおにぎりはうんまいし、道端には赤い田の神さぁ。鹿児島はこんなのがそこらじゅうにあるからすごい。
大口では、島津の重臣・新納忠元の墓と忠元神社をたずねる。『にいろ』と読むとはずっと知らなかった。仁王像の立つ諏訪神社に手をあわせ、ガチャで引いた田の神さぁを連れて帰路へ。新水俣から新幹線で北上し、〆は博多でとんこつラーメン。高菜をのせて、濃密な北薩摩の二泊三日を閉じた。
北薩摩のカッパと田の神さぁ
鹿児島の川辺には「ガラッパ(河童)」の伝承が色濃く、湧水町にはカッパ像の並ぶガラッパ公園がある。金山で知られる菱刈には、金鉱石をかかげる巨大なカッパ像まで。田畑を見守る石像「田の神さぁ(たのかんさぁ)」は薩摩・大隅・日向に広く分布する民間信仰で、同じ鹿児島でも南薩と北薩で佇まいや彩色が違うのが面白い。温泉もまた豊かで、無色透明のぬる湯が町のそこかしこに湧いている。