大島で御嶽山と砲台跡、福津あんずの里と宗像大社
朝の神湊波止場は、春とは思えない寒風。それでも渡船を待つ観光客は多く、なかなか揺れる船にゆられて大島へ上陸する。島をめぐるならレンタサイクルが人気らしいが、坂を思えばここは素直にバスに乗る。漁港にはJF宗像の島らしく、小舟がのんびりと舫(もや)われていた。
まずは島の北、砲台跡へ。コンクリートの円い砲座とトーチカが海を向いてならび、銃眼ごしに風車と玄界灘がのぞめる。そしてその海の先に、沖ノ島がくっきりと浮かんでいた。ズームすればするほど、あれが人を寄せつけぬ神の島かと胸が高鳴る。つづいて島いちばんの高み・御嶽山へ。強い風に枝をねじらせた木立を抜けて登頂すると、玄界灘と博多湾がぐるりと開け、山上には御嶽宮がしずかに鎮座していた。下山路はそのまま宗像大社・中津宮へと続いている。
港まで下りて、名物の魚ロッケ(ぎょロッケ)をほおばる。衣はサクサク、中はふわふわ、ばりうまか。見送る大島の沖には掃海艇が一隻——御嶽山からも気になっていた影の正体だ。渡船で本土へ戻り、福津のあんずの里へ花見に向かう。桜は咲いていたけれど、お目当てのあんずはほとんど終わっていた(´・ω・`)。それでも「空間神社」とあだ名した四開宮で空間属性に思いをはせ、宗像大社・辺津宮の高宮祭場にも手をあわせて、海の女神をめぐる一日を結願する。締めは福岡に帰って肉ごぼ天うどん、海ごしの夜景を眺めておつかれさま。
宗像三女神と三つの宮
宗像大社がまつるのは、天照大神の子とされる三柱の女神。沖合60kmの沖ノ島に田心姫神(たごりひめ)をまつる沖津宮、大島に湍津姫神(たぎつひめ)をまつる中津宮、本土に市杵島姫神(いちきしまひめ)をまつる辺津宮と、海を北へたどる三宮で一体をなす。古来、沖ノ島は島そのものがご神体の「神宿る島」として女人禁制・上陸厳禁をまもり、4〜9世紀の祭祀遺物がほぼ手つかずで残ることから「海の正倉院」とも呼ばれる。2017年、関連遺産群としてユネスコ世界遺産に登録された。
海の島のめぐみ
大島は玄界灘にうかぶ、人口700人ほどの小さな有人島。島の交流館には「島の食文化」が並んでいた——ウナギ科のクロアナゴを味噌仕立てにした「トウヘイ鍋」、ウニの卵巣を練りこんだ「がや味噌」、雨が少ない島で育つ甘夏みかん。そして港の売店で頬ばる魚ロッケは、白身魚のすり身を揚げた島のソウルフード。衣はサクサク、なかはふわふわで、訪れたら外せない一品だ。