福岡出発、山陽路を東へ前乗り
翌朝の雨がどうにもヤバそうで、「いっそ前乗りしちゃおか」と夕方の家を飛び出した。小倉でひと息、若廣の焼き鯖すしをつまめば、後ろ向きな出発もなんだか旅らしくなってくる。
山陽路をそのまま東へ。夜は生姜たっぷりのタンメンで身体をあたため、たどり着いたのはお洒落なカプセルホテル。閉所はちょっと苦手だけど、これまで泊まったカプセルの中ではいちばん快適な部屋だった。
明石城から大阪・京都へ
朝の明石城は、思ったより石垣が立派でかっこいい。ただし城のほうは石垣から雑草が生えまくりで、整備にはあまりお金をかけていない様子。隣の公園では菊花展のまっさかり——菊人形もいたけれど、クオリティはご想像におまかせ。山陽電車と阪急を乗り継いで十三へ出て、名物のかすうどんをすする。カリッとした食感と、かすから染み出す旨味がたまらない。高槻でいったん途中下車し、城下町の名残をぶらり。立派だった高槻城は、明治にお堀を埋められ、石垣は国鉄の下に敷かれてしまったという。
午後は雨の京都へ。阪急を出たとたんにインバウン度が跳ね上がり、新京極も錦市場も、日本語より外国語のほうが目立つほどの人、人、人。土砂降りのなか二条城をぐるっと一周し、「兵庫が晴れたならこっちももうすぐ」と踏んで、嵐の後の濁流を見に嵐山へ。渡月橋のにごり水に「うひゃ~」と声が出た。締めは西院のラーメン横綱で、チャーハンを自分で炒める謎のセルフ体験。黒胡椒のきいた豚骨しょうゆを、ネギ入れ放題ですすって一日が終わる。
明石城の櫓
1619年、小笠原忠真が徳川幕府の命で築いた明石城。本丸の四隅に三重櫓を建てる計画のうち、いまも残るのは巽櫓(たつみやぐら)と坤櫓(ひつじさるやぐら)の二基で、ともに国の重要文化財。天守は一度も建てられなかった。眼下の明石公園では秋の菊花展がひらかれ、丹精込めた大輪の菊や菊人形が並ぶ。
京北・北山杉の里から伏見、守口へ
三日目は一転、山の国へ。栂ノ尾でJRバスに乗り換えて、ぐんぐん山奥の周山(京北)へ。こんな山深い里でも、京都市内と同じ右京区だというから面白い。道の駅で買い物をして、名物の納豆餅をほおばる——甘く味つけされた納豆が餅に入っていて、これが京北だけの独自の食文化らしい。本命の北山杉の里・中川へ降りれば、杉木立に抱かれた集落に、一本の母木から接ぎ木で増やしたという“クローンの杉”がまっすぐ天を突く。川沿いには磨き丸太を乾かす木造倉庫が立ちならび、ペンキを塗ったような白い肌が、じつは丸太の素の色だと知る。
市内に戻って三条会商店街へ。目当ての蒸し寿司は売り切れ、すべり込んだ中華屋のエビチリが久々に(゚д゚)ウマー。旧字の扁額が読めない京都市役所を横目に、初めての先斗町を抜け、人であふれる鴨川と祇園を渡る。夕方は港町アピールの伏見へ。龍馬通りを歩き、月の桂のひやおろしに英勲のしぼりたて……気になる地酒を物色する。今夜の宿は守口。マンホールにまで守口大根が描かれた町で、立ち飲みのすじ肉汁に舌をうならせた。
北山杉と台杉
京都市北部の北山地方は、室町時代から「北山丸太(磨き丸太)」を産する杉の名産地。茶室や数寄屋の床柱に珍重され、仕上げには川砂で丁寧に磨きあげる。中でも中川は、その発祥の地とされる。独特の「台杉仕立て」は、一本の台(株)から何本もの幹を垂直に立ち上げて育てる仕立て方で、一度に多くのまっすぐな材が採れる。株から幹が何本も伸びる姿は、どこか不思議で神々しい。
交野山ハイキングと名門大洋フェリー乗船
天気もいいし、インバウンドのいなさそうなところで登山でも——と、守口から京阪バスで津田へ。源氏の滝からスタートして、交野市の交野山(こうのさん)に登頂。山頂に鎮座するでっかい巨岩「観音岩」に立てば、京阪の町も大阪平野もぜんぶ見晴らせて、思わず「お京阪を一望やぁ✨」。山崎が交通の要衝なのも、俯瞰するとよくわかる。
下山して大和郡山へ。記憶よりずっと城らしい郡山城では、石垣にお地蔵さんや墓石まで積まれていて、逆さに埋まった「さかさ地蔵」に(´;ω;`)。金魚のまちらしく、そこかしこで金魚が泳ぐ。そして旅のクライマックス、大阪南港から名門大洋フェリーに乗船——予約履歴を見ると、なんと14年ぶり。車の収納が二段ある大きな船で瀬戸内海へ繰り出し、バイキングの夕飯をつつく。明石海峡大橋をくぐり、セブンティーンアイスをかじり、瀬戸大橋は……見にきたらもう消灯。かわりに満天の星を見上げて、船はしずかに西へ進む。
交野山の観音岩
大阪府交野市と奈良県境にそびえる交野山(標高341m)。その山頂には「観音岩」と呼ばれる巨岩がでんと鎮座し、梵字が刻まれた磐座(いわくら)として古くから信仰を集めてきた。岩の上に立てば、枚方・寝屋川から大阪平野、晴れた日には六甲の山並みまで一望のパノラマ。京阪沿線の里山ながら、ちょっとした達成感の味わえる絶景スポットだ。
フェリーで九州帰還、帰宅
早朝、船は新門司港へ。朝ごはんが早いはずだ、と思いながら九州の地を踏む。在来線でもいいけれど、通勤ラッシュは避けたいので小倉から新幹線でさくっと博多へ。送り込み用なのか、博多行きなのに座席が全部新大阪向きなのにはワロタ。土産を抱えて、五日間の気ままな関西旅はおしまい。ただいま、福岡。