佐賀から多久・大町・白石の神社と城跡巡り
朝の福岡を発って佐賀駅へ。この日は国体(国スポ)の開幕日で、駅も町もどこかそわそわしている。乗り換えのすきまに市内をぶらりと歩き、重文の楼門をもつ與賀神社に手をあわせ、佐賀の近代をひらいた「佐賀の七賢人」のひとり・島義勇の像を見あげた。そのまま唐津線で多久へ——龍造寺家をまつる多久八幡神社では、ずんぐりと変わった形の狛犬が迎えてくれる。
多久のハイライトは、孔子をまつる多久聖廟。神社とも寺とも違う、どう参ればいいのか戸惑う静かな廟だ。朝ごはんは岸川まんじゅうの「石垣」と、聖廟のプリントが愛らしいボーロ。花祭の里では、畦や石垣に沿って咲く紅白の彼岸花に出会い、さっそく胸が高鳴った。
峠を越えて長崎街道の小田宿、そして杵島炭鉱で栄えた大町へ。街道には白壁の町家が、路地には煉瓦づくりの小屋が点々と残る。昼は郷土麺のたろめん——ちゃんぽんを優しくしたような、素朴であたたかな一杯。午後は龍造寺隆信の須古城跡、湧水の縫ノ池、真言密教の道場だったという稲佐神社をめぐり、レンコンとタマネギの名産地・白石へ。道の駅で買いこんで、狭い安宿に腰を落ち着けた。
多久聖廟と孔子
多久聖廟は、1708年に多久領主・多久茂文が建てた、孔子をまつる廟。日本に現存する孔子廟のなかでも古く、国の重要文化財に指定されている。神社でも寺でもないので作法に戸惑うが、春と秋には中国の古式にのっとり孔子を敬う「釈菜(せきさい)」の儀式が今も続く。学問の神として合格祈願の参拝者も多い。領主がこれほどの学びの殿堂を山里に築いたことに、文を重んじた多久の気風がにじむ。
小城・江里山の棚田彼岸花と唐津城
明け方からの雨音に起こされ、空はぐずつき模様。それでも本命の彼岸花スポットへ向かう。高架下の道に一列につらなる緋色をながめ、名水の里らしい天山酒造の白壁ぞいを抜けて、いよいよ江里山へ。
佐賀いちの彼岸花の名所・江里山は、名のある山の中腹にひらけた棚田の里。刈りとった黄金の田のふちを真紅の帯が縁取り、眼下には小城の街と有明海がひろがる。雨降るどころか晴れてきてクソ暑いほどの陽気のなか、心ゆくまで花を堪能した。下山して千葉城跡へ。須賀神社の急な石段をのぼれば、小城の町が一望だ。
小城といえば羊羹。老舗・村岡総本舗で試食した一切れが、がばい美味い。手頃なお昼が見つからず、昼は小城産のミルクックで割りきって唐津へ。続日本百名城の唐津城を見あげ(天守はもともと無かった“偽天守”だとか)、しめは虹ノ松原のからつバーガー。硬めのパンに効いたソースで、秋の二日間をおいしく閉じた。
江里山の棚田と彼岸花
小城市・江里山は、天山のふもと、山の中腹にひらけた棚田の集落。稲穂が実る畦を真紅の彼岸花が縁取る景色が有名で、見頃の時期にはカメラを手にした人が各地から訪れる。彼岸花は球根に毒をもち、昔からモグラやネズミよけに畦や土手に植えられてきた——棚田を守る実用から生まれた景色でもある。花のころはちょうど稲刈り前後。黄金の稲、緋色の花、そして眼下の有明海が一枚におさまる、秋だけの贈りものだ。