唐津の滝と紫陽花、武雄温泉から長崎へ
梅雨まっただなかの曇り空。自宅を出て、向かうは佐賀・唐津の相知。麦が終わって、ちょうど田植えのシーズンだ。たどり着いた見帰りの滝は日本の滝百選のひとつで、水しぶきのまわりに紫陽花がいっぱい♥ 青、青紫、桃色——斜面を埋める手毬のなかに、大きなカタツムリのオブジェまでいた。何色が好き?とたずねあいながら、しっとりした雨の季節を歩く。
蕨の棚田は「日本一の高石積み」。坂はきつくて、ずっと押して登ったのにもう久多久多(ヽ´ω`)。大平展望所はガスっていたけれど、晴れていればきっといい眺め。永野の風穴は天然のクーラーで、外は30℃なのに中はひんやり——ここを一軒買い取って住みたいくらい。川古の大楠は枝ぶりがよく、でかい盆栽のような貫禄だった。
武雄温泉へ。朱塗りの楼門をくぐり、新館のレトロなお風呂で熱めツルスベのいい湯にちゃぷり。さっぱりしたところで西九州新幹線に乗り、トンネルを抜けてひと息に長崎へ。大波止の謎の鉄玉を横目に、涼しくなった夜の思案橋あたりをぶらぶら。眼鏡橋のたもとの末広で、やわらか甘い角煮と、ゴマがふわふわ香るおぢやに舌鼓をうった。
見帰りの滝と相知のあじさい
唐津市相知町にかかる見帰りの滝は、落差およそ100mの段瀑で、日本の滝百選に選ばれている。一帯には数万株ともいわれる紫陽花が植えられ、梅雨どきには「あじさいまつり」でにぎわう名所だ。青や紫、桃色の花色は土の酸度によって変わるといわれ、同じ株でも場所で色づきが違う。雨やしぶきに濡れた花と、水音が響く緑の谷——紫陽花がいちばん似合うのは、やはりこの季節だ。
路面電車と堤防道路、島原半島から大牟田へ
二日目は路面電車にちょっとだけ揺られて長崎駅へ。すっかり様変わりした新しい駅から、まずは湯江まで列車で移動する。ここから自転車の出番——諫早湾の長い堤防道路をこいで、有明海を横断するのだ。真ん中あたりでは緑のちいさな羽虫が嵐のように湧いて、欄干にびっしり張りついて難儀したけれど、堤防を境に北と南で水の色が違うのがはっきり見えた。子どもの頃テレビで見た干拓問題の現場が、ここだった。
島原半島に上陸。恵比寿さんの石像だらけの神代の町をかすめ、国見でお目当てのカニ定食🦀。身は濃厚でうまいけれど、食べるところは少なくて、一度食べれば充分という感じ。それでも通りには蟹屋さんがずらりと並び、半島が海の幸の町であることを教えてくれる。
島原城は日本百名城のひとつ。天守にのぼれば、島原のまちの向こうに雲仙の山なみが広がる。雲仙レモネードでひんやりチャージしてから、のんびり港へ。島原港から三池港まで、自転車ごとフェリーに乗って「船が出るぞぉぉおお!!」。渡った先は炭鉱の町・大牟田。ねらいのラーメンは完売していたけれど、肉厚むちむちの煮込みハンバーグ定食で、二日間をしっかりしめくくった。
諫早湾干拓と堤防道路
有明海の奥、諫早湾を横切る約7kmの潮受け堤防の上に、自転車でも渡れる道路が通っている。1997年、293枚の鋼板が湾を一斉に閉め切った光景は「ギロチン」と呼ばれ、広大な干拓農地を生んだ一方、有明海のノリの不作やアサリの激減をめぐって、漁業者と営農者の開門・非開門の争いが長く続いてきた。堤防を境に、内側の調整池の水はよどんで茶色く、外側の海とは色がはっきり違う。賛否のわかれる風景のなかを、ただペダルをこいで渡っていく。