← 一覧
阿蘇ミヤマキリシマと、豊後の磨崖仏
ASO · BUNGO-ONO · 2024 初夏

阿蘇ミヤマキリシマと、豊後の磨崖仏

火の山のピンクと、石にきざまれた祈り。

2024.5.18 ▶ 5.19

Days2日間
Dist約155km
Area熊本・大分
Top最高 1381m

五月の阿蘇は、火の山がいちばんあでやかになる季節。草千里の草原を背に烏帽子岳へ登れば、登山道の両脇はミヤマキリシマのピンクで埋めつくされ、ふりかえれば阿蘇の大カルデラがぐるりと広がっていた。満員の路線バスに押しつぶされながらたどり着いた山上の、ごほうびのような景色。

一夜明けて舞台は大分・豊後大野へ。段差を落ちる沈堕の滝と打ちっぱなしの古い発電所跡、平安の昔から雨ざらしで立ちつづける菅尾の磨崖仏、山あいに刻まれた磨崖クルス。火山のいのちと、石にきざまれた千年の祈り——まるで色合いの違うふたつの日を、まんぷくでつないだ初夏の二日間。

1
DAY 1 · 05.18

阿蘇・草千里で烏帽子岳登山とミヤマキリシマ

福岡から高速バスで阿蘇へ。草千里ゆきのバス停は国際色ゆたかな長蛇の列でパンパン、二台目にようやく乗りこめば、隣の巨漢に押しつぶされながらぐんぐん山を登っていく。火口シャトルは運休中——それならばと、草千里で降りて烏帽子岳をめざす。

登山道に足を踏み入れたとたん、まわりの木がほとんどミヤマキリシマ。満開のピンクのトンネルを抜けて、あっけないほど楽に登頂。山頂は360°ぜんぶ阿蘇で、メロンゼリーみたいにまんまるな米塚もかわいい。下りてからのお楽しみは、やっぱりあか牛。あか牛丼に、ふにふにの高菜まん、ひんやりジャージー牛乳のアイス。

地震のあと工事中だった阿蘇神社は、りっぱに再建されていた。宮地駅から九州脱出特急にゆられて、県境をこえ大分・豊後大野の三重町へ。駅名表示の下にはシイタケの絵。トキハのある奥深い町をぶらりと歩き、夜はとり天定食と乙姫にんにくの天ぷらで、天ぷらサクサク・🍚大盛りのしあわせに浸った。

移動 約101.4km / 獲得標高 29m

ミヤマキリシマ

九州の高い火山にだけ自生する、小ぶりのツツジ。阿蘇・くじゅう・雲仙などの山肌を、五月下旬から六月にかけてピンクに染める。火山ガスや痩せた土という過酷な環境に適応した植物で、噴気のそばでも群落をつくる。烏帽子岳や杵島岳の登山道はちょうどこのミヤマキリシマの道で、花の盛りには斜面いちめんが淡紅色に燃え立つ。

2
DAY 2 · 05.19

豊後大野・臼杵の磨崖仏めぐりと大分から帰路

二日目は、朝イチにレトロな大野竹田バスのターミナルから沈堕の滝へ。段々の岩肌を水がどうどうと落ちていく。すぐそばには打ちっぱなしコンクリート……ではなく、大正の面影を残す沈堕発電所跡。線路ぎわは知る人ぞ知る撮り鉄スポットらしく、赤い列車が鉄橋を渡るたびテンションが上がる。

菅尾駅で降りて、菅尾磨崖仏へ。平安時代からずっと外にあるのに、保存状態がすごい。赤い顔の阿弥陀如来がこちらを見ている——おこっているのか、照れているのか。お昼は道の駅みえで豚肉カボスステーキ定食。見た目は生姜焼きだけど、バター醤油とカボスの風味が独特で、🍚がすすむ。

橋の上を川が流れる不思議なアーチ橋を抜け、吉四六さんの本拠地・野津へ。商店街には小咄のパネルがあちこちに立ち、山あいには磨崖クルス——キリシタンの祈りが石にきざまれている。大分へ出て、謎のラーメン屋のチャーハンをかきこみ、府内の街と別府湾を見わたす露天風呂でひとっ風呂。日が沈む頃、夜行バスで福岡への帰路についた。

移動 約53.5km / 獲得標高 30m

磨崖仏と磨崖クルス

磨崖仏は、自然の岩壁に直接ほりこまれた仏像。大分県(豊州)は国内でも群をぬいて磨崖仏が多く、臼杵磨崖仏(国宝)をはじめ、各地の崖に平安〜鎌倉期の仏が残る。菅尾磨崖仏もそのひとつで、五体の仏が千年ちかく雨風にさらされながら色をとどめる。いっぽう野津の磨崖クルスは、禁教下のキリシタンが岩に十字を刻んだとされるもの。仏とキリスト、ふたつの祈りが同じ豊後の石にきざまれているのが面白い。