福岡から自転車で秋月・小石原へ、筑後川温泉泊
晴れた冬の朝は寒いけれど、気持ちがいい。桂川駅の三角模様を永谷園のお茶漬けになぞらえて笑いながら、まずは嘉麻の鮭神社へ。社殿には木彫りの鮭がずらりと奉納され、遠く北海道・稚内から届いたものまである——ここは鮭が遡上する南限の地なのだ。養鶏場名物のクソデカな揚げ菓子で腹ごしらえをして、新酒も一本GET。いよいよ長い長い八丁トンネルをくぐり、山の向こうへ抜ける。
トンネルを抜けると、黄金色の銀杏と散りぎわの紅葉が待っていた。秋月は有料駐車場だらけの城下町。眼鏡橋の石アーチと、城跡の石垣を彩るもみじを惜しみながら、さて今日の本命——皿を買いに小石原へ。秋月から標高差三百メートルの登りは思いのほかキツく(;´Д`)、たどりついた里で食べるだご汁定食が、野菜たっぷりで五臓六腑にしみわたった。
小石原焼は、楔形の点が螺旋を描く飛び鉋の模様がうつくしい。ホッサン用の平皿と小鉢を手に入れ、日のあるうちに下山。気温五度のダウンヒルは手が凍える。暮れゆく筑後川を渡って宿に荷をほどき、杷木の白楽天でとろりとしたドロちゃんぽんをすする。〆に硫黄の香るぬるすべの湯にちゃぷんとつかれば、冷えきった体がゆっくりほどけていった。
小石原焼のはなし
東峰村・小石原にひらいた、素朴であたたかな民陶の里。1682年ごろの開窯と伝わり、のちに柳宗悦らの民藝運動のなかで「用の美」を体現する器として評価を高めた。刷毛目・櫛描き・指描き、そしてろくろを回しながら鉋を当てて点々と削る「飛び鉋(とびかんな)」——楔形の点が螺旋を描く、あの独特の模様が看板だ。峠ひとつ隔てた大分・日田の小鹿田焼(おんたやき)とは兄弟のような間柄で、作風もよく似ている。登り窯の里で、普段づかいの一枚を選ぶ時間は格別だった。
筑後吉井の白壁と田主丸、久留米を経て帰宅
宿で朝食をとり、原鶴温泉のいいお湯は横目にスルーして、うきは市の筑後吉井へ。筑後川から引いた用水が町なかを流れ、白壁と土蔵の町並みがしっとりと続く。在郷町として栄えたころの面影を、冬の光のなかでのんびり歩いた。
お昼は久留米でちゃんぽんとグリーンカレー、どちらも捨てがたくて両取り。そして田主丸は、河童伝説の町。駅舎じたいが河童の顔をしていて、用水のほとりには屁こきカッパのユーモラスな像が待っている。若竹屋酒造場の白壁をのぞき、フルーツの里らしくモンブラン大福をほおばって——早めに切り上げ、暮れる前に福岡の自宅へ。クロちゃんでのお出かけも、春までしばしおあずけだ。
田主丸と河童
筑後川のほとり、久留米市田主丸町は古くから河童伝説が色濃い土地。大陸から筑後川を遡ってきた河童の総大将・九千坊(くせんぼう)が住みついたと伝わり、町のあちこちに河童の像やモニュメントが置かれている。極めつけは1992年に生まれた田主丸駅——駅舎そのものが河童の顔をかたどった、全国でも珍しい一棟だ。あわせて巨峰発祥の地のひとつとしても知られる果樹とワインの里で、柿や巨峰、それを使ったお菓子が名物になっている。