仙台へ移動しカプセルホテル泊
旅のはじまりは夕方の列車。日が暮れていくのを窓に映しながら、仙台をめざす。膝の上には日本ばし大増の幕の内弁当——いろとりどりのおかずをちまちまつまむうちに、もう旅の気分がすっかり満ちてくる。
着いた仙台で、今夜のねぐらはカプセルホテル。明日はいよいよ栗駒山。山の紅葉はいまが見頃だろうか、と胸を高鳴らせながら、小さな棚のなかで早めに眠りについた。
栗駒山の紅葉登山と前沢牛
朝いちの仙台で、まずは生そばをすすって腹ごしらえ。駅そばはまだ開いていなかったけれど、こちらは早朝からやっている。石越からバスを乗り継いで、栗駒山の宮城側の登山口・いわかがみ平へ。腹ごなしに食べたとん汁が、しみじみ美味い。
スタートは紅葉した低木に囲まれた石畳の道。しばらく登ると視界がひらけ、前には栗駒山、振り返れば錦に染まった下界——ここから先はずっと景色がやばい。山ぜんぶを紅・橙・黄がおおう、まさに「神の絨毯」。歩きやすい道なのに、絶景に足が止まってなかなか進まない。
山頂からは、ガスで通れない昭和湖を避けて産沼コースへ。岩手側に下るにつれだんだん晴れてきて、紅葉のトンネルと湯けむりの名残ケ原を抜け、須川温泉に到着。硫黄泉の露天でさっぱりしたら、バスで一ノ関へ。夜は奮発して前沢へ繰り出し、サーロインステーキに舌つづみ。このスレ始まって以来のぜいたくに、大満足の一日だった。
栗駒山の紅葉
宮城・岩手・秋田の三県にまたがる標高1626mの火山。なだらかな山ぜんたいがナナカマドやミネカエデで赤・橙・黄に染まる秋の紅葉はとくに名高く、「神の絨毯」とも呼ばれる。見頃は例年9月下旬から10月上旬で、宮城側のいわかがみ平からは比較的のぼりやすく、多くの登山者でにぎわう。山上の須川温泉は強い酸性の硫黄泉で、下山後のひと風呂にうってつけだ。
平泉の世界遺産と多賀城跡めぐり
宿のトイレで足を痛め、びっこを引きながらの最終日。バスに手こずりつつ平泉へ。世界遺産になってから初めての中尊寺は、昔自転車で来たときより、ずっと面白く感じる。金色堂は柱の螺鈿細工をもっと近くで見たいところ。義経最期の地・高舘義経堂は、お堂と歌碑があるくらいだけれど、北上川を見下ろす眺めがいい。
奥州藤原氏の居館あと、無量光院跡と柳御所遺跡をたどり、平泉名物(?)の吉野家のシュークリームをむしゃむしゃ。電車が遅れたおかげでうまく乗り継げて、ついでに多賀城跡まで足をのばす。いままさに整備中の古代城柵のあとを歩き、仙台にもどって半田屋で夕飯。登山とぜいたくで始まった旅を、なじみの味でしずかに閉じた。
平泉と奥州藤原氏
11〜12世紀、奥州藤原氏が四代にわたり栄華をきずいた、みちのくの黄金都市。初代・清衡が建てた中尊寺金色堂は、堂全体を金箔でおおい、柱や須弥壇に夜光貝の螺鈿細工をほどこした浄土世界の結晶だ。源義経が兄・頼朝に追われて最後に身を寄せたのもこの地で、高舘で自害したと伝わる。2011年、「平泉—仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群」としてユネスコ世界遺産に登録された。