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霞ヶ浦 帆引き船紀行
ITAKO · KASUMIGAURA · TSUCHIURA · 2023 みのりの秋

霞ヶ浦 帆引き船紀行

白い帆が湖をよこに滑る。水郷のふた日。

2023.9.30 ▶ 10.1

Days2日間
Dist約88km
Area千葉・茨城
Top最高 48m

関東の水郷へ。堤防で治水されるまえは、いくつもの島と集落が水辺に寄り添っていたという低地を、川と運河をたどって北へ走る。生きた川エビを売る直売所をのぞき、茅葺きの仁王門にかかる太いしめ縄を見あげ、発酵の里こうざきで塩麹のきいたパーコー麺をすする。レンガ積みの横利根閘門をくぐるころ、空には虹——千葉から茨城へ、水の国らしく、ずっと水に導かれた一日だった。

夕暮れの潮来でろ舟のゆれる水路をのぞき、更けていく空にのぼった名月を望遠でぐいっと手繰り寄せる。そして二日目の主役は、霞ヶ浦の帆引き船。白い帆いっぱいに風をはらみ、湖面をよこへ滑るように網を引く——かつての漁のすがたが、いまも観光のために湖上によみがえる。見送ったあとは土浦でれんこんづくし、駅ナカの角打ちで一杯やって、水郷のふた日を静かに閉じた。

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DAY 1 · 09.30

発酵の里と横利根閘門を経て潮来へ

思ったより天気のいい朝、水郷をめざして走りだす。まず目にとまったのは、生きた川エビをパック詰めで売る直売所。その場で素揚げに…とはいかなかったけれど、水のゆたかな土地に来たのだと実感する。滑川観音(龍正院)では、茅葺きの仁王門にかかる太いしめ縄にびっしりと草が垂れていて、これは何の意味だろうと見あげる。本堂にかかった古い絵には、治水される前の水郷——島が点々と浮かび、岸辺に集落が並ぶ景色が描かれていた。

雨宿りをかねてお昼は発酵の里こうざきへ。塩麹のパーコー麺は、肉が厚くてやわらか、スープは麹たっぷりでうまい。レンガを美しく積んだ横利根閘門をくぐるころ、空には虹がかかった。ここで千葉から茨城へ。コスモス畑ごしに電車を撮り、夕方には水郷のまち潮来に到着。稲荷山公園から町を見晴らし、日暮れの土手には彼岸花、夜の水路にはろ舟が灯りにゆれていた。

夕飯はとんかつ とん平。皿からはみ出すほど大きなカツに腹いっぱいで、食後のサービスは、まさかのレーコー(アイスコーヒー)。宿にもどって窓の外を見あげれば、九月下旬の名月。望遠レンズで、うさぎの毛穴まで見えそうなほどぐいぐい手繰り寄せた。

移動 約45.4km / 獲得標高 13m

横利根閘門

利根川と横利根川をむすぶ水門で、1921(大正10)年の完成。ふたつの門で区切った室の水位を上げ下げして、水位の違う川のあいだを舟が行き来できるようにする——パナマ運河と同じ複閘式のしくみだ。英国の技術を取り入れたレンガ積みのうつくしい姿で、国の重要文化財に指定されている。水郷の治水と舟運を支えてきた、水の国らしい土木遺産。

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DAY 2 · 10.01

霞ヶ浦・歩崎の帆引き船と土浦れんこん

潮来の朝は、レトロな無人販売の食堂から。あらいやオートコーナーのやきにく弁当は330円、霞ヶ浦を眺めながらの朝ごはんにほっこりする。湖の南岸を歩崎へむかって走ると、あぜ道にはやっぱり彼岸花。見わたすかぎりレンコン畑なのに、やたら立派な古い商家や民家が多いのが、ふしぎで愉しい。

歩崎に着くと、この日の主役・帆引き船が船溜まりで出番を待っていた。やがて湖上に、白い帆がいっぱいに張られる。船は帆で風を受け、横すべりするように進みながら網を引いていく——明治にうまれ、いまは観光と伝統継承のために操業される、霞ヶ浦の秋の風物詩だ。望遠で手繰り寄せたり、遠くに眺めたり。帆がたたまれて、湖上のショーは静かに幕を閉じた。

斜面がまるごと貝殻に見える崎浜横穴群に目を丸くしつつ、雨の降りだす前に土浦へ。ここは霞ヶ浦をひかえた、全国でも指折りのれんこんの産地だ。牛すじレンコン、レンコンもち、レンコン唐揚げ、はさみ揚げ——どれもサクサクで、でかいレモンサワーがすすむ。締めは土浦駅ナカの角打ちで地酒を一杯やって、水郷のふた日を終えた。

移動 約41.3km / 獲得標高 4m

霞ヶ浦の帆引き船

1880(明治13)年、漁師の折本良平が考案した霞ヶ浦独特の漁法。舟に大きな白い帆を張り、風を受けて横向きに進みながら、底引き網でシラウオやワカサギをとる。一隻で効率よく漁ができる画期的な方法だったが、昭和中期にエンジン船の曳き網へ移り、一度は姿を消した。いまは観光と伝統継承のため、霞ヶ浦の各地で夏から秋にかけて操業が再現されている。帆いっぱいに風をはらんで湖面をすべる姿は、水郷の象徴だ。