魚沼の社寺と小千谷のへぎそば、片貝まつりの大花火
未明に家を出て、たどり着いたのは涼しい浦佐。まずは毘沙門堂の普光寺へ。天井に躍る墨絵の龍に見入り、龍の口から水が湧く手水舎に手を清める。お目当ては「越後のミケランジェロ」とも呼ばれる幕末の名工・石川雲蝶。西福寺開山堂では、天井も欄間も壁も、どこを見上げても雲蝶の極彩色彫刻がうねっていて、彫刻だけでなく鏝絵や襖絵まで手がける多才ぶりに、ただ口がぽかんとあいた(九月いっぱいは特別に撮影可だったのもうれしい)。
黄金にこうべを垂れた魚沼の稲田を横目に、魚野川を何度も渡って南へ。朝ごはんはセキンバーガーの粗びきパティと夏野菜のハンバーガー、これが結構うまい。小千谷では名物のへぎそば——人気店はアホほど混んでいたので、すこし離れた須坂屋で、夏野菜の天ぷらを添えた一枚をたぐった。
夕方、いよいよ片貝へ。町は台地の縁にあって、花火は台地の上から上がるらしい。四尺玉の巨大な煙火筒のモニュメントを横目に、屋台で越後名物のポッポ焼きをほおばる——黒糖の効いた棒状の蒸し菓子で、甘い湯気がたまらない。浅原神社の筒やしめ飾りを見上げて、いよいよ奉納花火のはじまり。三尺玉が三発、そして世界一の四尺玉。写真じゃ伝わらない大きさで、ドンと来る衝撃波が腹の底にひびく。合間にスターマインもバンバン、長岡花火も顔負けの密度に、町ごと身をひたした夜だった。
片貝まつりと四尺玉
毎年九月九・十日、小千谷市片貝町の浅原神社に奉納される花火大会。北海道から九州まで各地から寄せられた奉納花火を、お祝いや故人を偲ぶ思いとともに、間髪いれずに打ち上げていく。目玉は直径約120cm・重さ約420kgにもなる世界最大級の「四尺玉」で、ひらくと直径およそ800m。打ち上げの衝撃波が地面と胸をゆらす。三尺玉も三発上がり、合間にはスターマインも。神社の裏手に打ち上げ場所があるため、少し町から離れて台地を見上げる方がよく見える。
越後のミケランジェロ・石川雲蝶
幕末、江戸から越後へ移り住んだ彫刻・絵画の名工。寺社の欄間や天井をうねるような立体彫刻で埋め、その超絶技巧から「越後のミケランジェロ」と称される。西福寺開山堂の天井や壁を飾る《道元禅師猛虎調伏之図》をはじめ、彫刻だけでなく絵画や鏝絵(こてえ・漆喰のレリーフ)まで手がけた多才な人で、魚沼一帯に作品が点在する。
青海川・吉川から高田城下へ、上越妙高の温泉で締め
翌朝は打って変わって海沿いへ。鯨波の海を見下ろし、クジラをかたどったトンネルをくぐって、海にいちばん近い駅・青海川へ。ホームのすぐ向こうが日本海で、潮の匂いと波の音に、ゆうべの火薬の余韻がほどけていく。御嶽山神社では、うさぎがいっぱい描かれた愛らしい絵馬に出会った。
鈍行を乗り継いで吉川へ。盛りは過ぎても、ハス田にはまだ花がぽつぽつ咲いていた——盛りのころはさぞきれいだろう。黄金の田んぼの向こうにそびえる米山の、どこか宇宙の侵略者じみた姿に笑いつつ、UFOみたいな銀色ドームのくびき駅、いつも動いているとは限らないくびき野レールパークへ。前島記念館では、郵便制度の父・前島密の像に迎えられた。
高田に着けば、桜で名高い高田城下。再建された三重櫓や旧陸軍の師団長官舎、一面の蓮が広がるお堀をぶらり歩く。運動したあとはやっぱりカレー——濃いめのルーに硬めのオム、サラダ付き大盛りで満足。締めは上越妙高の駅裏、釜ぶたの湯でぬるぬるのいいお湯にちゃぷちゃぷ。サメのフライで一杯やって、鈍行とお祭りの濃い二日間を静かに閉じた。
海にいちばん近い駅・青海川
信越本線の青海川駅は、ホームのすぐ目の前が日本海という、「日本で海にいちばん近い駅」として知られる無人駅。夕日の名所でもあり、ドラマのロケ地としてたびたび登場する。柏崎のあたりは、鯨波の海水浴場や、クジラをかたどったトンネルなど、海にまつわる名所が点在する。