上野原の祭りと、谷村の八朔屋台
新宿のバスターミナルから高速バスに乗って、山梨の上野原でひょいと降りる。この日のお目当ては都留・谷村の八朔祭だったのに、途中で寄った上野原もちょうど祭りの最中だった。石鳥居をくぐった牛倉神社の境内では、本殿で神楽が舞われ、笛と太鼓が流れている。まちへ出れば、集落ごとに神輿がしつらえられ、夏の名残の日ざしに幟がはためいていた。
上野原といえば酒まんじゅう。創業百余年の老舗が町なかに点在する。餡は売り切れで、買えたのは味噌と高菜。皮はすこし固めでむっちり、具は少なめだけれど、それがかえってちょうどいい塩梅だった。
電車を乗りついで谷村町へ。「八朔祭り 屋台巡行」の幟に導かれて角を曲がると、八朔屋台キタ━━!!——緋色の幕をまとった屋台が、通りをふさいでいる。屋台ごとに幕の意匠が違い、黒馬、虎、そして黒牛。刺繍にはなんと本物の角まで据えてある。狭い角では、車体をジャッキで持ち上げ、下に台をかませて、ぎぎぎと向きを変える。この「角曲げ」の力技がとにかく面白い。囃子は鳴りやまず、日が傾くほどに人は増えていった。
締めは肉うどんとモモ焼き。肉うどんの肉はなんと鶏——吉田うどんよりやわらかい麺に、鳥の脂が程よく張ってアツアツで甘め。モモ焼きは炭火の香ばしさで、柔らかくて脂も美味い。早いけど帰ろうか……と言いつつ、やっぱりビール。甲州味噌キャベツと鳥もつでもう一杯、まんぷくで夜の帰路についた。
八朔祭と屋台
都留市谷村(やむら)の八朔祭は、生出(おいで)神社の祭礼として江戸のころから続く、山梨を代表する秋祭り。見どころは、金糸銀糸の年代物の幕をまとった屋台(だし)の曳き回し。緋地に黒馬・虎・黒牛などを刺繍した幕は、下絵を名のある絵師に託したものと伝わり、屋根には金龍の彫刻が睨みをきかせる。狭い町なかの角では、車体をジャッキで持ち上げ下に台をかませて少しずつ向きを変える——この力技の「角曲げ」がハイライト。囃子にのって屋台が練り歩き、日が暮れると提灯に火が入る。
上野原の酒まんじゅうと牛倉神社
上野原は、山梨でも指折りの酒まんじゅうの里。米と麹からおこした酒種で皮をふっくら発酵させる、昔ながらの製法を守る店が町なかに点在する。餡だけでなく、味噌や高菜など惣菜系の具も定番だ。この日は総鎮守・牛倉神社の祭りと重なり、集落ごとに神輿が出て、まちは二重のにぎわい。「牛倉」の名にふさわしく、奇しくも谷村の屋台にも黒牛の幕が揺れていた。