富士山五合目から吉田口登山道を下山し吉田うどん
ホームを間違えて一本乗り遅れる、いつもの幕開け。富士回遊はすし詰めで、座席未指定券の勝手がわからないツーリストたちが通路にあふれる。大月で車両を切り離すと、車内はいよいよ満員電車の様相。河口湖で乗り換えた路線バスも、積み残しが出るほどの大盛況だった。
五合目に着くと、空気がもう薄い。眼下には雲、ふり向けば夏の富士。半袖短パンに2リットルのペットボトル片手で登ろうとする白人ツーリストを横目に、こちらは富士山型の菓子パンで腹ごしらえをして、いざ下山開始。山頂をめざす人の流れに逆らって、ひとり静かに吉田口登山道を下っていく。
九十九折に敷かれた石畳は、トレイルランナーが駆け抜ける高速登山道。けれど一歩外れれば、朽ちた山小屋の跡、森にのまれた浅間の社、苔むした石鳥居や石碑が点々と続く。かつて白装束の信者が登ったであろう古い道の気配が、くだるほどに濃くなる。崩れ落ちた冨士御室浅間神社の鳥居だけが、ぽつんと立っていた。
馬返しまで下りて、ゴールの北口本宮冨士浅間神社へ。杉木立の石像に迎えられて、富士下山完了。ふもとの富士山駅のうえには展望台があって、いま歩いて下りてきた山がまるごと見わたせた。そして締めは、西桂町のうどんの駅で肉きんぴらうどん。啜れないほど硬い麺に馬肉、すりだね。汁まで全部飲みほして、ごちそうさま。
吉田口登山道
富士吉田の北口本宮冨士浅間神社を起点に、山頂へと至る最古の登山道。江戸時代には「富士講」の信者が白装束で列をなし、馬返しまで馬で上がり、そこから先は歩いて登った。沿道には御師(おし)の宿坊や山小屋、浅間神社の末社が点在し、いまも石畳や鳥居、朽ちた建物にその名残をとどめる。五合目までバスやスバルラインで一気に上がれる今、ふもとから歩き通す人は少ないが、歴史の層がいちばん厚いのはこの道だ。