堺・百舌鳥古墳群と職人のまち
旅のはじまりは、まだ眠そうな早朝の堺。お目当ては百舌鳥古墳群だ。ニサンザイ、御廟山、いたすけ……水をたたえた堀に緑がこんもりと盛り上がって、池つきの前方後円墳のスケールにいきなり圧倒される。仁徳天皇陵まで来ると堀は三重、とにかくクソ広い。やっぱり古墳は上から見てナンボ——と思っていたら、頭上を観光気球がふわり、空には環水平アークまで出て、ちょっとしたコーフン。
百舌鳥八幡宮の大楠は、爽やかな香りを放つご神木。古墳めぐりのあとは、刃物・線香・自転車と、職人のにおいが残る旧市街へ。利休ゆかりの杜をのぞき、堺名物のけし餅を手に入れる。海辺に立つ旧堺燈台はレトロでなかなかかっこよく、日本一低い一等三角点の蘇鉄山にも“無酸素登頂”。締めは天ぷら屋で、肉厚しいたけに紅しょうが、水茄子にどて煮——単価も安くて(゚д゚)ウマー。明日はいよいよ南の島へ飛ぶ。
百舌鳥・古市古墳群
堺に広がる百舌鳥(もず)エリアには、4〜5世紀に築かれた大小の古墳が集まり、2019年に「百舌鳥・古市古墳群」としてユネスコ世界文化遺産に登録された。なかでも仁徳天皇陵(大山古墳)は全長約486mと国内最大級で、三重の堀をめぐらせた前方後円墳。あまりに巨大すぎて地上からでは全体像がつかめず、“空から見てナンボ”とはよく言われるところ。墳丘をおおう緑は、長い年月をかけて自然に育った杜だ。
堺の朝市から、空路で石垣島へ
二度寝の誘惑をふりきって、堺の魚市場で朝ごはん。揚げたての天ぷらをつまんだら、関空からピーチで一気に南下する。降り立った石垣島は、晴れているのに湿度85%——アツィー(;´Д`)。さっそくマウンテンバイクを借りて、相棒にまたがった。
通りすがりの食堂で頼んだ牛そばが、牛肉ゴロゴロで大当たり。生にんにくとフーチバー(よもぎ)がよく合う。あとは行き先も決めず、西海岸をのんびり流す。名蔵アンパルのマングローブ、もう穂が出はじめた田んぼ、南国の光。曇り空を気にしながら御神崎までたどり着くと、風が気持ちよくて、来てよかったと心から思えた。
八重山そば
沖縄そばの八重山版。本島のものより麺が細めの丸ストレートで、紅しょうがをのせないのが特徴とされる。牛肉やかまぼこをのせた素朴な一杯で、ツルッとしていて食べやすい。島で「そば」といえば、この沖縄系そばのこと。生にんにくやフーチバー(よもぎ)、コーレーグース(島とうがらしの泡盛漬け)で味変しながらすするのが島流だ。
石垣島北部、最北端の平久保崎へ
今日は石垣島の北へ、最北端をめざす。朝の底原ダムはでっかくて、🐂(牛)もまだお寝坊中。玉取崎の展望台に立つと、大海原に浮かぶ小島に雲がひっかかっていて、なんとも気持ちがいい。坂道にはちっちゃなパイナップル、途中にあったサンドバッグは……よく見ると不発弾だった。
誰もいない静かなビーチで、時間が溶けていく。そして平久保崎——石垣島最北端キタ━━!! 往復の道のりは正直キツかったけれど、灯台の立つ岬の景色が、全部ごほうびにしてくれた。帰りは船越屋食堂で、牛筋たっぷりのカレーに生き返る。吹通川のマングローブには、片方のハサミだけ大きなカニがうようよ。パイナップルジュースでクールダウンして、宿のアダンへ。今日はよく焼けた。
平久保崎
石垣島の最北端にある岬。白い灯台の立つ丘から、リーフに縁どられた青いグラデーションの海と、牧草地をのぞむ。市街からは片道およそ50kmと遠く、自転車なら往復100km級のロングライド。半島の周回路はダートで心もとなく、来た道を引き返すピストンになる。それでも「苦労して来たかいがあった」と思わせてくれる、八重山でも指折りの絶景スポットだ。
西表島日帰り、船浮とイダの浜
高速船に自転車を積んで、西表島へ日帰り遠征。船のデッキまで届く海の青さがすごい。ジャングルの甘い匂いが、海の上まで漂ってくる。上原に着けば、イリオモテヤマネコの顔をしたかわいいバスがお出迎え。白浜からさらに小さな船に乗りかえて、車では行けない集落・船浮(ふなうき)へ渡る。
船浮のさきにあるイダの浜は、ため息が出るほど白くて穏やかで、ジャングルの香りに包まれた楽園だった。金城商店のオニササ(ポーク玉子)で腹ごしらえ。帰りは浦内川に立ち寄れば、行きは大河だった流れも、すっかり潮が引いていた。マングローブの干潟には、またしてもカニ、カニ、カニ。ちゃんと回るには二泊はほしい——そう思いながら、大原から石垣へ戻った。
船浮とイダの浜
西表島の西のはずれ、船でしか行けない小さな集落・船浮(ふなうき)。白浜港から定期船でわずか十数分、人口は数十人ながら小中学校もある。集落から遊歩道を抜けた先に、無人のイダの浜が広がる。遠浅で波はおだやか、サンゴのかけらがまじる砂はどこまでも白い。背後にはすぐジャングルが迫り、甘い植物の匂いが満ちる、八重山屈指の秘境ビーチだ。
竹富島さんぽと八重山博物館
今日は竹富島へ。コテコテの観光地だと思っていたら、いい意味で裏切られた。赤瓦に白砂の道、石垣とブーゲンビリア——重要伝統的建造物群保存地区の集落は、沖縄の原風景そのもの。登れないなごみの塔の足もとから、赤瓦の海をながめる。白砂を敷いた御嶽(うたき)は、しんと神聖な空気だ。
西桟橋は、かつて島の人が西表の田んぼへ通った船着き場。真っ青な海に一直線にのびて、たまらなく絵になる。星砂の浜では、手のひらに砂をくっつけて★さがし——ちゃんと見つかると、ちょっとうれしい。昼は豆腐ちゃんぷるーをいただいて、午後は石垣に戻って八重山博物館でお勉強。水牛ものんびり、本当にいい島だった。
竹富島と赤瓦の集落
石垣島から高速船で約10分。島の中心にある三つの集落は、琉球石灰岩の石垣と白砂の道、赤瓦に漆喰のシーサーがつらなり、国の重要伝統的建造物群保存地区に選ばれている。島には「うつぐみ(協同)」の精神で景観を守る伝統があり、新築も赤瓦に統一されるという。移動は水牛車やレンタサイクルで。砂浜には、有孔虫の殻からできた「星の砂」が打ち上げられる。
石垣市街と白保、南ぬ島にさよなら
旅も最終日。宿の朝ごはんは、ゴーヤーにポーク玉子、海ぶどう、そしてブルーシールのアイスまで、沖縄名物づくし。小雨のなか、石垣の市街に残る御嶽(オン)と井戸(カー)をめぐる。森にかこまれ、きれいに白砂を掃いた御嶽は、やはり神聖な気配。サンゴの石垣と赤瓦が路地のあちこちに残っていて、歩くだけで楽しい。サザンゲートブリッジから海をのぞき、締めはやっぱり八重山そば。
バスで白保へ。海辺はフクギと石垣が織りなす、静かでいい雰囲気の集落だ。そして畑のまんなかに、ラピュタみたいにぬっと鎮座する津波大石——その昔、津波が運んできたという巨岩に、ただただ圧倒される。塩川商店で島の空気を名残惜しみつつ、石垣空港へ。南ぬ島(ぱいぬしま)に、また来る日まで。
津波大石(つなみうふいし)
石垣島の大浜、畑の中にぽつんと横たわる巨大なサンゴ石灰岩。高さ数メートル、重さ数百トンにもおよび、1771年の明和の大津波(八重山地震)、あるいはそれ以前の津波によって海から運び上げられたと考えられている。国の天然記念物。緑をまとってそびえる姿はどこか物語めいていて、災害の記憶を今に伝える、自然の記念碑でもある。