笛吹の桃源郷とリニア見物、河口湖・新倉山の花見
「所詮いばらぎ」なんて軽口をたたきながら朝いちで山を越えて、ついたのは笛吹市御坂。バスを降りて坂をのぼると、もう目のまえが桃色でいっぱいだ。畑のおっちゃんが「下のほうは昨日の風でちっちゃった、今いちばんは上のここだよ」と見頃を教えてくれる。桃の花はもう終わりかけ、でもギリギリ間に合った——甲府盆地をはるかに見下ろす斜面に、桃のピンクと菜の花の黄色がかさなって、春というより初夏みたいな陽気のなか、汗ばみながら花のあいだをさまよった。
もともとのルートをだいぶ外れて花に見とれていたら、沿線にちらほら人だかり。リニア実験線だ。見物のじいさんいわく「15分おきくらいで来る」。待っていると——リニアキタ━━!! はじめは真ん中で止まって折り返し、次はトンネルの奥まで行って戻ってくる。雪をかぶった南アルプスを背に、未来の白い車両が目の前をすべっていく。スピードはまだ控えめだけど、乗れる日が来るかどうかは静岡しだい。花鳥山の展望台には、星をちりばめたような模様があるという不思議な「星石」もあった。
お腹ぺこりんこで御坂の町へおりて、レミオロメン行きつけというひさご食堂でカツ重。ケチャップをかけると、これがカツに驚くほど合う。腹ごしらえのあとはお花見第二ラウンド、ピンクと黄色の春爛漫をもうひと巡り。いちばん上まで登りきってから、バスで河口湖へ抜けた。
河口湖はインバウンドでにぎやか、桜もまだまだ見頃。「富士急行線」が富士山麓電気鉄道に名前を戻したばかりの駅前で、レトロな旧型電車を横目に、電車で下吉田へ。新倉山浅間公園では、朱塗りの五重塔(忠霊塔)と桜、そして富士山がそろう絶景——フォトスポットは5分制限でも長蛇の列ができるほど。舞い散る花びらに見とれ、クソ寒いと震えながら、締めは濱野屋で味噌仕立ての幅広うどん。平たい麺をすすって、春の日帰り旅はおしまい。
リニア中央新幹線 実験線
山梨リニア実験線は、都留市から笛吹市にかけて約43kmにわたって延びる超電導リニアのテストコース。走行試験の日は沿線に見物人が集まり、浮上して走る車両を無料でながめられる。花鳥山の展望台はその人気スポットのひとつで、桃畑と甲府盆地を見下ろす高架を、白い車両が滑っていくさまが見える。試験走行なので時速はおさえめだが、営業運転では時速500km級。品川〜名古屋の開業は、トンネル工事をめぐる議論もあって長らく足踏みが続いてきた。
新倉山浅間公園の五重塔
富士吉田市・下吉田の高台にある新倉山浅間公園は、桜・五重塔・富士山を一枚におさめられる絶景で、いまや海外からの旅行者にも大人気。塔は戦没者を慰霊するため1963年に建てられた「忠霊塔」で、朱塗りの五重の屋根がうつくしい。春は約650本のソメイヨシノが咲きそろい、塔の正面のフォトスポットには、撮影5分制限が設けられるほどの行列ができる。