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道東冬景色 流氷と知床・摩周湖へ
ABASHIRI · SHIRETOKO · MASHU · 2023 真冬のオホーツク

道東冬景色 流氷と知床・摩周湖へ

流氷の海と、凍てつく静寂のなかへ。

2023.2.23 ▶ 2.26

Days4日間
Dist約2372km
Area北海道・道東
Top最高 602m

二月の道東は、海が凍る。シベリアから流れ着いた流氷がオホーツク海をびっしりと覆い、空港を出たとたんに頬が痛むほどの冷気が待っていた。

成田から女満別へ飛び、網走で薄氷を望み、翌朝は砕氷船で真っ白な流氷原のただなかへ。知床のウトロ、雪に埋もれた野付半島のトドワラ、何も見えない霧の摩周湖——そして最終日、晴れ間をつかんで摩周湖と美幌峠がいっせいに姿をあらわした。白と青しかない世界を、刺身と地酒と味噌ラーメンと温泉であたためながらめぐった、真冬の四日間の記録。

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DAY 1 · 02.23

成田空港から女満別へ 網走で流氷を望む

旅のはじまりは成田。空港へ向かう前に、成田山の出世稲荷に手を合わせる。稲荷でも寺だから柏手は打たないのね、と首をかしげつつ。昼は空港でハンバーガーをほおばり、紙ストローの頼りなさに小さく文句を言いながら、いよいよ北へ飛び立った。

女満別におりると、思ったより寒くない——が、それはまだ序の口。バスに揺られて凍った網走湖を抜け、網走の市街へ。河口のあたりにうっすらと白いものが見えるけれど、肝心の流氷は岸からはまだ遠い。明朝の砕氷船を予約してあるだけに、接岸してくれと祈るばかり。

日が暮れても、南国育ちには拍子抜けするほど冷えない夜。カウンターの空いていた居酒屋にすべりこみ、北海道の真鱈の白子に刺身、地酒「北の勝」を傾ける。〆に寄ったスーパーで、流氷そっくりの青いビール・網走ビールの流氷ドラフトと、網走産の揚げかま、明日の朝ごパンまで買いこんで、網走の一夜は更けていった。

移動 約1018.7km / 獲得標高 197m

流氷がやってくる海

オホーツク海の流氷は、はるか北のアムール川が注ぐ海域でできた氷が、シベリアおろしに押されて南下してきたもの。網走や紋別の沿岸は、海水が凍る「結氷」の世界的な南限にあたる。接岸するかどうかはその日の風しだいで、沖に見えていた氷も風向きひとつで一晩で遠ざかる——岸からフーフーと息を吹きかけたくなる、気まぐれな相手だ。

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DAY 2 · 02.24

網走発の流氷観光船と斜里経由で知床ウトロへ

夜明け前の網走川に、白い霧が流れていた。冷えこんだ川面から湯気のように立ちのぼる「毛嵐(けあらし)」——日が昇るにつれて、ようやく道東らしく身が縮むほどしばれてくる。保存したくなる朝の光景を胸に、港へ急いだ。

そして砕氷船「おーろら」が出航する。網走の港を離れてしばらく、海の色が消えた。流氷キタ━━!! 船のへさきが氷をバリバリと割って進み、見わたすかぎりの白い氷原が、晴れわたった空の下で青く光る。うぉぉぉ、と声が漏れる。モスクワ便の窓から見るのとはわけが違う、流氷のただなかだった。

網走駅から鉄道とバスを乗り継いで知床へ。凍りついたオシンコシンの滝を横目に、流氷を眺めながら雪道をひたすら歩いてウトロへ。見上げるオロンコ岩、海辺に伏せたゴジラ岩、背後にそびえる白い知床連山。夜は観光地価格に苦笑しつつ、ウトロの居酒屋で氷下魚(こまい)とめばるをつつき、ホステルの鉄分たっぷりのかけ流し湯でようやくあたたまった。

移動 約91.6km / 獲得標高 260m

砕氷船『おーろら』

網走港から流氷原へ出る観光砕氷船。船首で氷を割りながら進むようにつくられていて、びっしりと接岸した流氷のあいだを縫って進む。流氷はただ白いだけでなく、海水の塩が抜けて青白く透け、天気のよい日には空の青を映して輝く。運が悪ければ沖に流されて氷に出会えないこともあり、晴天のうえ流氷原のただなかに入れたのは、まさに日頃の行いのおかげ、だった。

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DAY 3 · 02.25

定期観光バスで野付半島トドワラと霧の摩周湖

朝のウトロは、セイコーマートの朝ごはんから。釧路まで行く定期観光バスは、この日めずらしく二台運行の満員御礼。凍ったオシンコシンの滝をまた車窓に見送り、知床峠が雪で通れないぶん、根北峠をぐるりと越えて野付半島を目指す。

野付半島のトドワラは、雪に完全に埋もれていた。トドマツの立ち枯れが点々と残る白一色の原っぱを、吹きさらしの風のなかへ分け入っていく——一歩まちがえれば遭難しそうな、荒涼とした美しさ。帰り道、魚をくわえたキツネがひょっこり現れて、こちらをちらりと見やってから雪原を駆けていった。

午後は弟子屈へ。『霧の摩周湖』は看板に偽りなく、展望台に立っても乳白色のなかに何も見えない。それでも鹿はたくさんいた。どか雪のなか、弟子屈ラーメンの味噌をすすって冷えた体をあたため、温泉付きのペンションへ。ぬるすべの貸し切り湯に浸かっていた夜、道東をぐらりと揺らす地震があった——とりあえずラーメンを食べよう、と誰かが言った。

移動 約170.6km / 獲得標高 545m

トドワラと野付半島

根室海峡に細長く突き出した、全長約26kmの砂嘴(さし)が野付半島。その先にあるトドワラは、海水に浸かって立ち枯れたトドマツ林の跡で、まるで地の果てのような荒涼とした景色が広がる。地盤沈下と浸食で年々その姿を失いつつあり、やがて消えてしまうともいわれる。夏は木道を歩ける湿原も、真冬は一面の雪原。風のなかに枯れ木が点々と立つさまは、どこか水墨画のようだった。

4
DAY 4 · 02.26

川湯・屈斜路湖と晴れた摩周湖、女満別から帰路

最終日は、嵐のあとのすっきりした朝。予報では晴れは午前中だけ——この僅かな晴れ間に賭けて動く。摩周駅から汽車で川湯温泉へ渡り、バスで硫黄山(アトサヌプリ)へ。柵のすぐ手前でも地面から湯気が噴き出し、噴気孔がぼこぼこと音を立てる。くさい屁をこいてもバレなさそうだ。

屈斜路湖に出ると、湖畔から温泉が湧き、白鳥が湯に入っている。砂を掘れば足湯になる砂湯のほとりで、おだやかな冬の湖と白鳥をながめた。道の駅摩周温泉まで戻り、評判のぽっぽ亭で豚丼を頬ばる——まだあたたかいタレの甘さに、これは美味い、と顔がほころぶ。

そして摩周湖リベンジ。ふたたび展望台に立つと、昨日の霧が嘘のように晴れて、青い湖面がくっきりと姿をあらわした。うぉぉぉぉ!!! 美幌峠へ回れば、一度は『なーんも見えん』と嘆いた眼下に屈斜路湖がぱっと広がり、ドーナツ生地にじゃがいもが丸ごと入ったあげいもが、冷えた体にしみる。女満別からスープカレーを胃に流しこみ、遅延する桃色の飛行機を待って、白と青の四日間を閉じた。

移動 約1089.9km / 獲得標高 647m

晴れた摩周湖と美幌峠

摩周湖は年間を通して霧の多い湖として知られ、『霧の摩周湖』と歌にもなった。カルデラ湖で流れ込む川も流れ出す川もなく、透明度は世界有数。晴れて湖面を見られると婚期が遅れる、なんて言い伝えもあるほど、素顔を見せてくれない。この旅では一日目に霧、二日目に快晴と二度通い、みごとに晴れ姿を射止めた。屈斜路湖を見おろす美幌峠ともども、つかの間の晴れ間を逃さなかった、計画通りの勝利だった。