← 一覧
安倍川をさかのぼって
SHIZUOKA · ABE RIVER · 2023 冬

安倍川をさかのぼって

吊橋をわたり、わさび丼をかきこみ、源流の湯へ。

2023.1.21 ▶ 1.22

Days2日間
Dist約142km
Area静岡
Top最高 937m

真冬の静岡。川幅はおどろくほど広いのに、流れは糸のように細い——そんな安倍川を、ひたすら源流めざしてさかのぼる旅。揺れる吊橋を一本また一本とわたり、名物のわさび丼をかきこみ、標高千メートルの梅ヶ島温泉で冷えをほどく。

二日目は、わさび栽培発祥の地・有東木(うとうぎ)へ。沢という沢にわさび田が段々と連なり、ろうばいが甘く香る谷をあるく。静岡市街へおりれば大河フィーバーの駿府城、そして夜は黒はんぺんのおでんに地ビール、鯨料理をはしご。茶とわさびと家康、静岡のぜんぶを欲ばった二日間の記録。

1
DAY 1 · 01.21

三島から静岡・安倍川を遡り梅ヶ島温泉へ

三島から東海道線に揺られて、静岡市街へ。駅ホームの立ち食いで朝いちの一杯——スレの語り草『チーズそば』をすする(けれど、チーズはどこへやら…)。干し芋のならぶ街を抜ければ、きょうの主役・安倍川があらわれた。川幅はおどろくほど広いのに、流れは糸のよう。ここから源流をめざして、路線バスと徒歩で川をさかのぼる一日がはじまる。

茶畑の斜面を縫い、揺れる吊橋を一本また一本とわたる——細い板一枚、手すりは低く、作業の人が渡った直後はドキドキもの。真富士の里の名物わさび丼はたった三百円、ツンとくる辛さとカツオ節のうまみで(゚д゚)ウマー。ろうばいの甘い香りに見送られ、川幅はだんだん狭まっていく。

日の暮れかかる頃、標高千メートルの梅ヶ島温泉に到着。すぐそばには一級河川・安倍川の『起点』の碑が立っていた。ほのかに硫黄の香るつるすべの湯で冷えをほどき、貸切の浴室でちゃぷちゃぷ。鹿のタタキに蟹鍋、山奥のごちそうをつついて、源流の夜はしずかにふけていった。

移動 約94.7km / 獲得標高 943m

わさび丼ってなに?

炊きたてのごはんに、おろしたての生わさびとカツオ節、そこへ醤油をたらりとまわしかける——というのが静岡・安倍川筋のおやつめし『わさび丼』。テレビドラマで一躍知られたが、地元では昔からのごちそうだ。主役に見えるわさびは、じつはトッピング。『本体はカツオ節』という声もある。真富士の里では驚きの三百円で味わえた。ツンと鼻にぬける辛さと出汁のうまみは、わさびの名産地ならでは。

2
DAY 2 · 01.22

有東木のわさびの里散策と駿府城・静岡はしご酒

朝風呂でとろけてから、バスで川を少し下って有東木(うとうぎ)へ。ここは山葵栽培発祥の地——道端の沢にまでわさび田が段々とつらなり、水音がすずしい。斜面の集落を見上げる眺めは思わず「うおー」。極太の杉にかこまれた白髭神社に手をあわせ、あちこちで咲くろうばいの甘い香りに包まれる。茶畑の緑と相まって、静岡のアイデンティティ——茶とわさび——をぎゅっと凝縮したような谷だった。

うつろぎで、またもわさび丼(お蕎麦は売り切れ!)。わさび多めで、天ぷらはなんと、わさびの葉。山をおりて静岡市街へ戻れば、今年の主役は大河ドラマの家康公。お堀に櫓をうつす駿府城公園を、のんびりぶらりとめぐる。

そして夜は、お待ちかねのはしご酒。赤提灯のならぶ青葉おでん街をのぞき、West Coast Brewing のJuicy IPAで乾杯。魚河岸大作では静岡らしい鯨を味噌煮で——味噌の味はしないのに、ゴボウの土の香りが鯨によく合う。締めは帰りの『居酒屋新幹線』で、安倍川の名を負うた安倍川餅。きな粉とあんこで、川の旅をあまく結んだ。

移動 約47.2km / 獲得標高 269m

わさび栽培発祥の地・有東木

安倍川の上流、山あいにある有東木(うとうぎ)は、日本のわさび栽培がはじまった地とされる。江戸初期、湧き水の豊かなこの谷で村人が野生のわさびを沢へ移し植えたのが起こりと伝わり、その株はやがて徳川家康にも献上され、長く門外不出とされたという。香りのよい在来種は、ここから伊豆や各地へ広まった。急斜面を流れる清らかな湧き水を段々に区切ったわさび田が、いまも谷いっぱいに連なっている。