加須・騎西から三県境・渡良瀬を経て古河へ、提灯竿もみまつり見物
まだ暗いうちに家を出て、まずは人形のまち鴻巣へ。軒先にずらりと並ぶおひなさまをのぞき、ひなの里で人形づくりの歴史にふれる。手袋がほしいほどの寒さに、空はいつまでもぱっとしない。玉敷神社では、散った銀杏が足もといちめんを黄金色に染めていた。久しぶりの騎西をぶらついて、開くのを待って入った加須うどんの店は大繁盛。うっかり頼んだ茄子南蛮は、柔らかいのにちゃんとコシがあって、こりゃうまい。
埼玉から群馬、栃木、また埼玉、そして茨城——県道九号を行ったり来たりするうち、たどりついたのが本日の主役、三県境。平地で三つの県が一点に交わる、全国でもめずらしい場所だ。足もとの小さな境界杭をまたいで、葦原のひろがる渡良瀬遊水地をわたる。気品ある街並みの古河に入れば、篆刻美術館や永井路子の旧宅、青木酒造の蔵……茨城の小京都の名にふさわしい佇まいが続く。境内では、うまく積まれた菰樽の下で看板猫がくつろいでいた。
そして、夜。三年ぶりに復活した提灯竿もみまつりが、古河の冬を熱くする。灯のともった提灯を竿の先につけ、夜空でぶつけ合い、相手の竿をへし折って雌雄を決する。開会式から予選、そして五つ巴の決勝へ。すごい人出のなか、首が痛くなるまで見上げて、最後は全はらチームが優勝! 寒さに震えながら、たこ焼そばで〆た。
三県境って?
栃木・群馬・埼玉の三県が、ただ一点で交わる場所。山の頂や川の中ではなく、歩いて立てる平地にあるのは全国でもここだけとされ、ちょっとした観光名所になっている。もとは渡良瀬川や谷中湖のあたりを流れる川が県境だったが、のちの河川改修で田んぼのなかに境界だけが残り、いまの姿になった。足もとの小さな杭をまたぐだけで、一歩ごとに県をこえられる不思議なスポットだ。
提灯竿もみまつり
師走の古河をいろどる、夜の奇祭。長い竹竿の先に火のともった提灯をいくつも吊るし、各チームがそれを高くかかげて、夜空でぶつけ合う。ねらいは相手の提灯の火を消し、竿をへし折ること——「もむ」の名のとおり、熱気と歓声のなかで竿と竿が激しく揉み合う。蝋や火の粉が降ってくるので、見物も自分の身は自分で守るのがお約束。コロナ禍で中断していたが、この年は三年ぶりの開催とあって、揉みに揉んで大いに盛り上がった。
古河散策と境町でブルーインパルス遠望、水海道経由で帰宅
一夜明ければ、古河は濃い霧のなか。あのタワマンからは雲海みたいに見えるのかな、なんて思いながら、手作り感のある朝ごはんをいただく。生卵で卵かけごはんにして、ほかほかとあたたまる。霧が晴れるのを待って、もう一度まちをぶらつく。酒樽を三段に積んだねこタワーの看板猫に見送られ、やっぱり最高だなこの神社、と朝日のさす境内を見上げた。
八時半開店のぬた屋で、お目当ての鮒の甘露煮をGETだぜ。渡良瀬の空には虹色の気球がゆらゆら、ゴーゴーと音を立てて近くまでやってきた。そこから境町を目指してこぎ出す。河岸の駅さかいでは、めずらしい自動運転バスに遭遇。遠くの空には、百里の航空祭に向かうブルーインパルスの影もちらりと見えた。
朝日屋の小麦まんじゅうは、地元のさしま茶とともに。岩井では大澤酒造の「秀緑」の大看板をながめる。筑波山がだいぶ近く見えるころ、荷物はおみやげの酒でずっしり。買いすぎて早く帰りたくなって、水海道から電車にゆられて帰途についた。
日本初の自動運転バス
茨城県境町は、公道での自動運転バスを定常運行させた、国内さきがけの町。小さなフランス製のバスがハンドルもなしに町なかを走る姿は、のどかな利根川べりの風景に妙にしっくりなじむ。河岸の駅さかいはその拠点のひとつで、観光客もひょいと乗り降りできる。少子高齢化のすすむ地方の足として、未来のかたちをひと足さきに見せてくれる取り組みだ。