新宿から夜行バスで奈良へ出発
旅のはじまりは新宿のバスタ。改札でおなじみのSuicaのペンギンに見送られて、夜行バスに乗りこむ。安いし朝には着いているのがありがたい。
シートにもたれて目を閉じれば、頭の中ではもう御所の町並みと、明日のぼる山の稜線を思い描いていた。おやちゅみ——。
御所の寺内町から葛城山・金剛山を登山、富田林泊
夜明けの御所に到着。コンビニは遠いけれど、新地商店街のパン屋さんとお弁当屋さんで朝ごはんと山の食料を確保できてひと安心。環濠にかこまれた寺内町の路地には、風格ある町家や、まるい金具のならぶ古い門、レトロな洋品店の看板がそのまま残っていた。地元の人がわざわざ家からパンフレットを持ってきてくれて、バスの待ち時間ではとても足りないほど。
鹿マークの小さなバスは登山者で満員。葛城山ロープウェイで一気に空の上へあがれば、下界よりぐっと冷えた空気。腹ごしらえをして山頂へ向かうと、大和葛城山は黄金色のススキ野原。ちょうど山の上だけ雲がかかって(´・ω・`)となりつつ、穂のあいだを抜けて水越峠へ下る。「大阪最高でんがなまんがな」——府の最高地点は、山頂ではなく県境の斜面にあった。
そこから金剛山へ登りかえす。石灯籠のならぶ葛木神社に手をあわせて、一言願っておく。転法輪寺のあたりはいい感じに🍁。海抜1125mの山頂には、無事かえるの石碑。軽く一杯やって、楠木正成ゆかりの千早城跡・千早神社へ下山、完、了! 足はガックガクだけど、今夜の宿は滝谷不動門前の古い旅館。二食付き六千円ちょいで、鯛のかぶと煮まで出る上々のごはんだった。
葛城と金剛、ふたつの霊峰
大和葛城山(959m)と金剛山(1125m)は、奈良と大阪の府県境にまたがる金剛山地の双璧。葛城山は春のツツジと秋のススキ草原で知られ、山頂一帯が黄金の穂で埋まる。金剛山の山頂部には葛木神社や転法輪寺がまつられ、修験の山として古くから信仰を集めてきた。両山をつなぐ水越峠のそば、金剛山の大阪側斜面には「大阪府最高地点(標高1,053m)」の標柱が立つ——府の最高点が山頂ではなく県境の坂の途中にあるのが、なんともおかしい。
滝谷不動と水越峠越え、西大寺で一杯して帰宅
宿の朝ごはんは、豆腐と卵としらすおろし。うすめの赤だしをすすれば、体がほどけていく。門前の瀧谷不動明王寺は、朝のお経に一般の参拝客もたくさん——そんなに大きくないのに、駅も門前旅館もあるのは、昔から人気のあるお不動さんだからだろう。道の駅かなんで昔なつかしの「ねこもち」を見つけ、楠木正成の生まれた千早赤阪村をぬけていく。
金剛バスで水越峠に出て、登山者の路駐だらけの道を今度は歩いて越える。人里まで下りると、気持ちのええ秋晴れの棚田と里がひろがっていた。名柄の集落では、大正の郵便局をつかった郵便カフェや、軒先に杉玉のさがる酒蔵、どっしりした旧家が目をひく。そして一言さん——葛城一言主神社は参拝客でにぎわい、季節はずれの桜まで咲いていた。とりあえず不老不死を願っておく。
御所に戻って、酒屋さんで奈良の地酒「風の森」をGET。生酒しかないけれど、保冷バッグ持参でなんとかなるやろ。大和高田の商店街を冷やかし、電車を乗りついで西大寺へ。駅ナカで豊祝の原酒に奈良漬、酒粕の土手煮——昼飯抜きでいきなり日本酒はやべーな、と言いつつ、ツマミもいい感じ。丁寧に奈良と大阪を巡った三日間を、ぐいとしめくくった。
一言さんと、奈良の地酒
葛城一言主神社は「一言の願いなら何でも聞き届けてくれる」として親しまれ、いちごんさんの愛称で全国の一言主神社の総本社とされる。古くは役行者(えんのぎょうじゃ)が葛城山で一言主大神を使役したという伝承も伝わる、葛城の古社だ。いっぽう御所から大和高田にかけての一帯は、昔ながらの酒どころ。御所市の油長酒造がつくる無濾過生原酒「風の森」は、いまや全国に名の知れた一本で、名柄の葛城酒造とともに、この土地の水と米の実力をいまに伝えている。