二宮・中井・秦野の精霊馬めぐりと宮ヶ瀬湖
朝いちばんは二宮の川勾神社(かわわじんじゃ)へ。相模国の二之宮にあたる古社で、茅葺きの門をくぐり、木もれ日のさす境内に手をあわせる。中井へ下って、厳島神社とその名を冠した厳島湿生公園。水辺に木道がまっすぐわたり、その先に赤い鳥居が立つ涼やかな場所だ。ここまでは、お盆らしい盆飾りはまだ見あたらない。
電車で秦野へ。駅前の店は潰れていて少しさびしいけれど、まずは秦野盆地湧水群の湧き水をゴクゴク。そして——ここからが本番だった。町のあちこちの辻に、精霊馬や盆飾りがずらりと並ぶ。砂を盛り、小さな階段と青竹の櫓を組み、蓮の葉にごはん・そうめん・おはぎまでを供えた「辻飾り」は、古い家ほど生の青竹で豪華に仕立ててある。砂も造花も辻の木箱も、ぜんぶイオンで買えるらしい。鳥につつかれないよう、お供えをラップでくるんだものまであった。二宮や中井ではひとつも見なかったのに、秦野ではかなりの割合で出会えるのが面白い。
飲食店の少ない秦野、お昼は箱根そばの冷やしキーマでさらりと——なすときゅうりがのっているのは、奇しくも精霊馬とおなじ取り合わせ。厚木に出て神奈中バスにゆられ、宮ヶ瀬へ。湖畔の園地から長い吊り橋をわたり、遊覧船に乗って、水をたたえた宮ヶ瀬ダムを見おろす。愛川のバス停から夕方の帰路へ。精霊馬をたずねる、しずかでまんぷくなお盆の一日だった。
精霊馬(しょうりょううま)
お盆に、きゅうりで馬を、なすで牛をかたどって供える風習。割り箸や爪楊枝を足にして立たせる。足の速い馬は御先祖さまに一刻も早く帰ってきてもらうため、のろい牛はお供えを積んでゆっくり帰ってもらうため——という願いがこめられている。地域によって作法はさまざまで、秦野のあたりでは辻(道の交わるところ)に砂を盛り、階段や青竹の櫓を組んで、ごはん・そうめん・果物・おはぎまでを並べる手のこんだ「辻飾り」が見られる。お供えが少し欠けているのは、鳥がついばんだのか、それとも御先祖さまが召しあがったのか。