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芦川すずらんから富士の茶畑へ
YAMANASHI → FUJI · 2022 初夏

芦川すずらんから富士の茶畑へ

輪行の自転車と、ローカル線の一泊旅。

2022.5.28 ▶ 5.29

Days2日間
Dist約164km
Area山梨・静岡
Top最高 1375m

輪行袋に自転車「クロちゃん」を詰めて、始発に近い電車で山梨へ。初夏の富士の裾野を、ペダルと各駅停車でつなぐ一泊二日。

一日目は河口湖のほとりから展望台に上がって富士山を望み、芦川沿いを下って上芦川のすずらん群生地へ。茅葺きの古民家や小さな郵便局をひやかしながら上九一色・下九一色を抜け、灼熱の甲府盆地に出る。身延線に乗りかえて下部温泉で湯を浴び、ゆるキャンの聖地・身延でみのぶまんじゅうを買って宿へ。二日目は富士市の茶畑のただなかを走り、緑の畝の向こうに立つ富士山を心ゆくまで眺めた。岳南電車の伝言板、吉原のそば、沼津港、柿田川の湧水、三島の梅花藻——水と緑のうつくしい裾野を、のんびり巡った記録。

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DAY 1 · 05.28

電車と自転車で芦川すずらんの里・下部温泉へ

始発に近い電車を乗り継いで、まずは河口湖へ。改札では駅のキャラクターがお出迎え、ホームに降り立てば残雪をまとった富士山がどんと構えている。風は強いけれど、「暑い」と聞いていたのが嘘のように涼しい。片道二百円のシャトルバスで展望台へ上がると、眼下に河口湖、その先に裾野がどこまでも広がっていた。空気が薄くて少々酸欠ぎみ、ここからいよいよ自転車の出番だ。

芦川沿いを下って、上芦川のすずらん群生地へ。林の中にぽつり、ぽつりと白い鈴の花。羽化したてのハルゼミがもう鳴きまくっている。茅葺きの古民家が点在する集落をひやかし、おごっそう家で干瓢の太巻き——山椒がピリッと効いていい塩梅。上九一色・下九一色の小さな郵便局を横目に、灼熱の甲府盆地へと下っていく。

甲府からは身延線にスイッチ。下部温泉でひと風呂浴びて、硫黄の香る湯をごくり。列車待ちのあいだに、ゆるキャン一色の身延のまちを歩き、土産屋でみのぶまんじゅうを確保する。日の暮れた柚木の宿に着いて、まずは風呂。夕飯は生シラスに山椒の効いた煮菜で、山梨と静岡のあいだの一夜がしずかに更けた。

移動 約105.4km / 獲得標高 344m

芦川のすずらん

甲府盆地の南、御坂山地のふところにある旧芦川村(現・笛吹市)は、本州では数少ないすずらんの自生地として知られる。上芦川の群生地では、五月下旬から六月にかけて、スズランが林床にひっそりと白い鈴を連ねる。園芸種のドイツスズランと違って花が葉の下に隠れるように咲くのが日本在来種の特徴で、群生地といっても一面に咲くわけではなく、木洩れ日の落ちる林の中にぽつぽつと息づいている。

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DAY 2 · 05.29

富士の茶畑から沼津・柿田川・三島へ

酒を飲みすぎて少々寝不足、東向きの部屋はカーテン越しにも朝が眩しい。朝ようかんで糖分を入れたら、いざ富士市の茶畑へ。神谷から須津渓谷のほうへのぼっていくと、斜面いちめんに手入れされた緑の畝が広がり、その向こうに富士山がすっと立っている——これが見たかった。地場産業に工業都市、海に東海道の大動脈と、ぜんぶ一望のぜいたくな眺めだ。

龍厳淵から大淵笹場へ。観光地化されて人は多いけれど、茶畑と富士山の取り合わせはやはり格別。畝が二色に染め分けられた一角は、美しすぎて理由を知りたくなるほど。コーヒーと茶をブレンドした一杯を買い、景色がよすぎてちっとも前に進まないまま、岳南電車の江尾駅へと下っていく。レトロな駅には、懐かしい伝言板が残っていた。

吉原でそば、謎の専用線や富士の水で仕込む酒蔵を横目に、東海道をたどって沼津港へ。海鮮の気分でもないので展望水門びゅうおを眺めるだけ。帰りは柿田川の湧水群に寄り道、吸い込まれそうに青い湧き間がこんこんと水を上げる。三島では梅花藻がもう咲きはじめ、水辺の小径をのぞいた。〆は居酒屋でうなぎコロッケに桜えびのアヒージョ、冷酒で乾杯して、新幹線で裾野をあとにした。

移動 約58.2km / 獲得標高 223m

富士と茶畑

富士山の南麓、富士市から富士宮市にかけては、温暖な気候と水はけのよい火山灰土壌を生かした茶どころ。斜面に等高線を描くように茶の畝が連なり、その奥に富士山がそびえる構図は、この土地ならではの初夏の絶景だ。大淵笹場は中でも知られた撮影スポットで、手前の茶畑・中景の集落・背後の富士がきれいに重なる。摘み取ったばかりの新茶の季節には、畝の緑がひときわ鮮やかに輝く。