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庄内 桜紀行 ― 残雪と夜桜と、日本海の夕日
YAMAGATA → SHONAI · 2022 さくら前線

庄内 桜紀行 ― 残雪と夜桜と、日本海の夕日

左沢線の春、お堀の夜桜、海へ沈む夕日。

2022.4.16 ▶ 4.17

Days2日間
Dist約313km
Area山形・庄内
Top最高 376m

四月なかばの山形は、桜前線がちょうど北国に届いたころ。朝から降る雨にけぶる霞城公園の桜を横目に、六両もつないだ左沢(あてらざわ)線に揺られて西川町へ向かう。残雪のまぶしい谷あいの道の駅で朝風呂をつかい、山菜のだしがきいた一風変わったつけ蕎麦をすする——春のはじまりは、まだ雪のにおいがした。

日が暮れて抜けた鶴岡では、鶴ヶ岡城址の夜桜がライトアップに浮かび、お堀の水面を鏡にして咲いていた。この夜の満月は「ピンクムーン」——桜の咲くころの春の月。翌日は酒蔵の町・大山で桜ごしに月山をあおぎ、麦切りをたぐり、龍神をまつる善寳寺の彫刻に目をみはる。しめは羽越本線の車窓から、日本海へ沈む夕日を見送って。庄内の春をまるごと味わった、二日間の記録。

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DAY 1 · 04.16

左沢線と西川町、鶴岡の夜桜

旅のはじまりは、雨にけぶる山形。午後には晴れるはずと言い聞かせながら、まずは霞城公園の桜をのぞく。駅にもどれば、左沢線がなんと六両編成——「大都会かよ」と笑って、さくらんぼの描かれた行先表示の電車に乗りこむ。田んぼと残雪の山あいを西へたどり、羽前高松からバスを乗り継いで西川町の道の駅にしかわへ。残雪のまぶしい谷あいで朝風呂をつかえば、旅の身体がほどけていく。

あぜ道にはカタクリが群れ咲いていた。お昼は山あいで山菜そば——と思いきや、運ばれてきたのは卓上のガス台。温かい山菜のつけ汁に冷たい蕎麦をくぐらせ、仕上げはそばがきを汁に落としてぐつぐつ煮る。とろみのついた出汁まで飲みほす、滋味ふかい一杯だった。月山の酒蔵資料館で限定の地酒を一本手に入れて、バスで日本海側の鶴岡へ抜ける。

鶴岡の夜は、夜桜に尽きる。鶴ヶ岡城址——会津の鶴ヶ城と紛らわしい名だ——のお堀端に、ライトアップされた桜がうかびあがり、水面にもう一つの桜が映る。まだ風は冷たいけれど、夜店の灯りと荘内神社の提灯がにぎやかだ。宿に入る前にスーパーでのぞいた地魚の刺し盛りと庄内の地酒で、しずかに一日を打ち上げた。この夜の満月「ピンクムーン」は、あいにくピンクには撮れなかったけれど。

移動 約94.4km / 獲得標高 321m

ピンクムーンって?

四月の満月を、ネイティブ・アメリカンの暦では「ピンクムーン」と呼ぶ。月そのものがピンクに染まるわけではなく、このころ北米で咲く芝桜(フロックス)の花にちなんだ、春の満月の愛称だ。桜の開花とほぼ重なるため、日本では花見の月として語られることも多い。満月には季節ごとに「スノームーン」「ストロベリームーン」といった愛称があり、どれもその時季の自然に由来している。鶴ヶ岡城址の夜桜の上にのぼったこの夜の月も、名前はピンクでも、実際はやわらかなオレンジ色をしていた。

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DAY 2 · 04.17

大山・湯野浜・加茂をめぐり日本海沿いに帰宅

二日目は、うそのような晴れ。明け方の月はオレンジがかって見えた。鶴岡から電車でひと駅、酒蔵の町・大山へ。小さな町に蔵元がいくつも軒をつらね、どの屋号も読み方が難しい。赤い腰壁のかっこいい古倉庫を抜けて、大山公園の高台へのぼる。

公園の桜ごしに、残雪をいただいた月山が庄内平野のむこうにくっきり。風もなく、日差しがあたたかい。昼は庄内名物の麦切りを——コシのある白い麺を、わさびではなく辛子の薬味でたぐる。つるりと平らげて、そば湯ならぬ麦湯でしめる。椙尾神社に詣でてから、善寳寺へ。龍神をまつる海の守り寺は山門の彫刻がみごとで、龍がうねる。

湯野浜温泉で足湯につかり、海のむこうに雪の鳥海山をのぞむ。加茂のクラゲ水族館では、名物のクラゲドリームシアターで青い光に漂う姿に見入った。いよいよ帰路へ。羽越本線の車窓いっぱいに、日本海へ沈む夕日がひろがる——思わず「保存した」と声がもれる、旅の締めくくりにふさわしい景色だった。車内では平田牧場のコロッケやかすべ、地魚と地酒で車内居酒屋を開店。桜と残雪と夕日を胸に、庄内の春はしずかに暮れていった。

移動 約217.7km / 獲得標高 174m

龍神の寺・善寳寺

鶴岡の郊外にたたずむ曹洞宗の古刹で、龍神をまつる海の守り神として、漁業や海運にたずさわる人々の篤い信仰を集めてきた。壮大な山門と、堂宇にほどこされた精緻な彫刻で知られる。かつては参拝客を運ぶ鉄道も通っていたが、半世紀ほど前に廃止され、いまは駅舎跡と記念館がその名残をとどめる。境内の池は、平成のころ「人面魚」が話題を呼んだことでも知られる、ふしぎな風格の漂う寺だ。