夜行バスで讃岐入り、東かがわ散策から宇和島へ大移動
風の強い朝、夜行バスで降り立ったのは鳴門と讃岐の県境あたり。斜めに登る乗り物「すろっぴー」で一日が始まる。目を洗えると評判の葛城神社にお参りし、海べりの魚市をのぞいてから、引田行きのバスを乗り継ぐ。朝いちばんから一杯のうどん——天ぷら三つで百円、昆布天がおいしい。うどん国の洗礼を、さっそく浴びる。
和三盆の里・三谷製糖の道具をながめ、紅殻壁のまぶしい引田の古い町並みをそぞろ歩き、讃岐二宮・白鳥神社へ。名物のぶどう餅を手に入れ、醤油と半熟卵をかけただけのうどんでお昼をすませる。右も左もため池だらけの讃岐平野を抜けて高松へ。えきちゃんのバースデイカードに見送られ、多度津から特急しおかぜ・宇和海を乗り継いで、日の暮れるなか愛媛の西のはて・宇和島まで、ひたすら大移動した。
バースデイきっぷ
JR四国が出している、誕生日の月に使えるおトクなフリーきっぷ。本人と同行者が、三日間つづけて四国内の特急・普通列車に乗り放題で、しかもグリーン車まで使える。乗りつぶしや大移動の強い味方で、この旅も讃岐から宇和島、中村、足摺と、きっぷ一枚で四国をぐるりと駆けめぐった。指定席の予約はちょっと面倒だけれど、乗れば乗るほど元が取れる。
宇和海の連絡船と遊子水荷浦の段畑、宿毛経由で中村へ
宇和島の港から、小さな連絡船に乗りこむ。乗客はわたしを入れて三人だけ。九島の南をまわり、三浦半島沿いに嘉島、戸島、蒋渕と、宇和海のリアス式の入り江を一つずつ訪ねていく。蒋渕に上陸すれば、トイレもない静かな漁村。ウグイスが鳴きまくる春の光のなか、真鯛やカンパチを育てる養殖筏が、青い海にいくつも浮かんでいた。
そして、十年越しのあこがれ——遊子水荷浦の段畑へ。急な斜面に石を積みあげた階段のような畑が、海へむかってなだれ落ちている。「見えた!」「キタ━━!!」、一番上まで登りきると、石垣とじゃがいも畑と宇和海が一望の絶景。晴れているうちに来られて、ほんとうによかった。
ここからまた乗り物を乗り継いで、南へ。城辺の『大都会』をひやかし、宿毛で甘いスープのラーメンをすする。鉄道で高知・四万十市の中村に入ったら、夜は居酒屋めぐり。塩タタキのカツオに、つわの炒めもの、あおさ——栗の焼酎・ダバダ火振のお湯割りで、土佐の夜はにぎやかに更けていった。
遊子水荷浦の段畑
宇和海にせり出した急斜面に、石垣で築かれた階段状の畑が広がる、愛媛・宇和島の名勝。春はじゃがいもの段畑で、海から吹き上げる潮風と段々の石垣が独特の景観をつくる。国の重要文化的景観に選ばれ、『耕して天にいたる』とも言われる人の営みの造形だ。頂上まではモノレールや細い農道が通い、登りきれば青い宇和海を一望できる。
中村から足摺岬・土佐清水、夜行バスで帰路へ
最終日は、どんより気味の空の下からスタート。菱田ベーカリーで朝ごパンを買って、早咲きの桜が咲く中村の一條神社にお参りする。駅からバスに揺られ、崖っぷちをかすめる道を抜けて、いよいよ四国の南のはて・足摺岬キタ━━!! うっすら晴れてきた岬の先に白い灯台が立ち、崖下には、スマホの画角にすら収まらない巨大な白山洞門が口を開けていた。
窪津まわりのバスで土佐清水へ戻り、お食事処で日替わり定食。ブリの刺身に焼き鮭、赤だしまでついて、東京から一番遠い街の味は、安くてやさしい。鹿島公園の海辺をのぞいてから、特急に乗って北へ。アンパンマン列車や新型特急を乗り継ぎ、高松でえきちゃんに別れを告げる。きっぷ一枚でめぐった四国の旅は、また夜行バスに乗って、しずかに帰路についた。
足摺岬と白山洞門
四国の最南端、太平洋に突き出す足摺岬。断崖の上に白亜の灯台が立ち、黒潮あらう大海原を見晴らせる。岬のすぐそばの海岸には、長い年月の波の浸食でくり抜かれた巨大な海食洞・白山洞門がぽっかりと口を開ける。高さ・幅ともに16mほどもある花崗岩の天然アーチで、国の天然記念物。岬一帯は、漂流からアメリカへ渡った中浜万次郎(ジョン万次郎)ゆかりの地としても知られる。