新幹線で三島入り 自転車で韮山反射炉・浄蓮の滝へ
朝いちの新幹線で三島へ。乗り換えて函南の駅前で折りたたみ自転車をひろげ、ペダルをこぎ出す。線路ぎわには菜の花が揺れ、そのむこうに富士山がうっすら。河津桜はもう名残の季節だけれど、一本だけ満開の木に出会うと、やっぱり足をとめてしまう。朝ごはんはタルタルたっぷりのコロッケとメンチ——朝から揚げ物、春の坂にはこれくらいがちょうどいい。
バチカン市国みたいなもんか、と軽口をたたきながら韮山反射炉へ。茶畑ごしに反射炉と富士山がそろえば、ここはもう静岡確定だ。いちごソフトでひんやりチャージして、大仁金山の石積みをのぞき、お昼は食堂で鹿カレー。スパイスの効いた一皿に、本わさびのツンがよく合う。
午後は中伊豆のわさび田をめぐる。万城の滝のしぶきは春でも寒いくらい、筏場のわさび田は世界農業遺産の澄んだ水をたたえていた。最後は坂をのぼりつめて山上の宿へ。汗だくで着いた部屋の窓からは、正面にうっすらと富士山。夜景のむこうにその影をさがしながら、反射炉ビヤにお刺身、山の天ぷらをつまんで、一日の疲れがほどけていった。
韮山反射炉
幕末、海防のための大砲を鋳造しようと築かれた金属溶解炉。炉内のアーチ天井に熱を反射させ、鉄を溶かす高温を得たことから「反射炉」と呼ばれる。実際に稼働した反射炉として国内で唯一ほぼ完全な姿で現存し、2015年に「明治日本の産業革命遺産」の構成資産として世界遺産に登録された。四本の煙突と茶畑、そして富士山がそろう眺めは、いかにも静岡らしい一枚になる。
大室山の山焼きと一碧湖、伊東で海の幸
朝の窓辺にはまた富士山。約束どおり、ちゃんと会えた。山をもうひとつ越えて伊東をめざす。途中の食堂で、550円のサバ定食に満足しながら、坂を押して大室山のふもとへ。咲きのこった河津桜にメジロが一羽——焼き鳥にしたらうまそう、なんて罰当たりなことを言いながら、火入れの時を待つ。
そして、山焼き。合図とともに枯れすすきの山肌へ火が放たれ、黒い煙と炎がみるみる駆けのぼっていく。近くにいると熱いくらいの迫力で、30分足らずで大室山はまっ黒こんがりに焼きあがった。毎年この一日で、山はまっさらにリセットされる。焼けたばかりの黒い山を背に、里の桜だけがのんきに咲いていた。
焼けあがった山をあとに、鏡のような一碧湖へ。お昼は伊東の寿司屋でマンボウ——イカと貝の中間みたいな不思議な食感に、目鯛やひゃくひろまで、見慣れない海の幸がずらり。木造三階の東海館や和田の大湯のある温泉街をぶらつき、海までくれば沖に初島。締めはひゃくひろの刺身とアジのまご茶漬けで、まだ明るいうちに帰路についた。
大室山の山焼き
伊豆高原にぽっこりと盛り上がる、お椀をふせたような標高580mの火山。全山をおおうすすきを守り、山容を保つために、毎年早春に山肌をまるごと焼きはらう「山焼き」が行われる。700年以上つづくとされる伝統行事で、火が入ればわずか30分ほどで山は黒々と焼けあがる。焼かれた山はやがて新しい緑に芽吹き、季節がめぐる。山頂へはリフトで登れ、お鉢めぐりの散策路から相模灘や天城連山を一望できる。