← 一覧
伊豆大島 さるびあ丸で火山の島へ
IZU OSHIMA TRIP · 2022 椿の季節

伊豆大島 さるびあ丸で火山の島へ

夜行の船で、噴火の島と椿の島へ。

2022.2.25 ▶ 2.27

Days3日間
Dist約550km
Area東京・伊豆大島
Top最高 777m

二月の竹芝桟橋。夜の東京湾に、オレンジの灯をともした「さるびあ丸」が待っていた。レインボーブリッジを真下からくぐり、羽田沖から横浜へ——波に揺られて一泊すれば、翌朝はもう伊豆大島。噴火をくり返してきた火山の島だ。

早朝の岡田港に降り立ち、バスで三原山へ。噴煙をあげる火口をぐるりと歩く「お鉢めぐり」、足もとに広がる黒い砂漠、赤くえぐれた谷。島の名物・明日葉の天丼にべっこう丼、クセのある御神火焼酎、便所臭ただよう名物くさや……食べて、歩いて、椿を愛でた三日間。帰りは強風でジェット船が欠航し、またさるびあ丸の長い船旅になった、のりもの好きにはたまらない島旅の記録。

1
DAY 1 · 02.25

竹芝からさるびあ丸の夜行便で伊豆大島へ

旅のはじまりは夜の竹芝桟橋。オレンジ色の船体に灯をともした「さるびあ丸」が、もう出港を待っている。のりもの好きにはこの一瞬がたまらない。船が出るぞぉぉぉ——岸壁をはなれた船は、ライトアップされたレインボーブリッジの真下をゆっくりくぐっていく。一度はこうして見上げてみたかった景色だ。

羽田沖でようやく東京湾らしい開けた海に出て、横浜ベイブリッジ、みなとみらいと灯りの街をながめながら南へ。新造船だけあって揺れは少ない。電波のない個室に荷を置き、明日の早朝着にそなえて早めに横になった。船のディーゼル音を子守唄に、島はもうすぐそこ。

移動 約32.0km / 獲得標高 10m

さるびあ丸

東海汽船が東京〜伊豆諸島に走らせる大型客船。2020年就航の三代目はオレンジの船体がトレードマークで、竹芝桟橋を夜に出て翌朝に大島・利島・新島・式根島・神津島を結ぶ。途中、東京・横浜でも乗り降りでき、横浜から乗ればレインボーブリッジとベイブリッジの両方を船上から楽しめる。悪天候で高速ジェット船が欠航しても、大きな船体のさるびあ丸は意外と平気で走ってくれる、たのもしい航路の主役だ。

2
DAY 2 · 02.26

岡田港上陸と三原山お鉢めぐり、大島公園の椿

三日月すらまだ暗い早朝、船は岡田港へ。悪天候のときは元町ではなく岡田に着くという。伊豆大島、上陸! ぞろぞろ降りた客はさっさとバスやレンタカーで散っていき、港にはもう誰もいない。朝焼けを浴びながら八幡神社で島の猫にあいさつし、元町で焼き魚定食をかきこんで、いよいよ三原山行きのバスに乗りこむ。

どんどん登って山頂口へ。おぉしゅごい、噴煙もみえる。足もとには1986年の大噴火で流れた黒い溶岩——全島民が脱出したあの噴火だ。社殿ギリギリで溶岩がよけていったという三原神社の「神回避」に手を合わせ、ここからお鉢めぐりへ。噴火口をぐるりと一周し、日本で唯一「砂漠」と呼ばれる黒い砂の荒野、赤くえぐれた赤ダレの谷を抜ける。案内はほとんどないけれど、地形がとにかくしゅごい。

無事生還して、歌乃茶屋で明日葉天丼。そばにも明日葉が練り込まれ、海老が二本も隠れていた。午後は大島公園の椿園で色とりどりの花を愛で、泉津の切り通しへ。元町の宿に落ちつき、夜はスーパーで買った名物くさや。たしかに便所臭はするけれど激臭ではなく、味のほうが濃い。クセのある御神火焼酎と合わせて、島の夜はふけていった。

移動 約263.8km / 獲得標高 820m

三原山とお鉢めぐり

伊豆大島の中央にそびえる活火山・三原山(標高758m)。噴火をくり返す「御神火」として島の信仰を集めてきた。1986年の大噴火では溶岩が町へ迫り、全島民約1万人が島外へ避難する騒ぎになった。火口のまわりをぐるりと一周する遊歩道が「お鉢めぐり」で、黒々とした溶岩原のただなかに、裏砂漠・表砂漠と呼ばれる火山砂の荒野が広がる。国内で地図に「砂漠」と記される唯一の場所だが、サラサラの砂ではなく、黒い火山礫がつづく異世界のような景色だ。

3
DAY 3 · 02.27

御神火の湯と地層大切断面、さるびあ丸で帰路

最終日は御神火の湯でひとっ風呂、朝からべっこう丼という贅沢。味の濃い漬け丼で、やっぱりこれは寿司で食べたい。鎮西八郎・源為朝をまつる為朝神社に手を合わせ、島の名所「地層大切断面」へ。噴火のたびに積もった層がバウムクーヘンのようにしま模様を描く、通称そのまま「バームクーヘン」だ。

バスをのりついで波浮港へ。火口が海とつながってできた入り江の港で、踊り子の里の古い旅館など、昔の姿をよく留めている。龍王崎の展望台は前を向いていられないほどの強風。クダッチ、下地と、読めない地名に首をかしげながら元町へ戻った。

強風でジェット船も熱海便も次々に欠航。頼みの綱はまたしてもさるびあ丸だ。岡田港からの昼行便に乗りこみ、「船が出るぞぉぉぉ」——なぜか蛍の光。千葉、三浦半島、第二海堡を横目に東京湾へ。夕陽の沈む海をながめながら横浜・大さん橋に着き、中華街で一杯ひっかけて、長い島旅をしめくくった。

移動 約169.9km / 獲得標高 136m

地層大切断面

大島一周道路ぞいにあらわれる、高さ約24m・長さ600mにおよぶ巨大な地層の断面。幾千年にわたる噴火のたびに降り積もった火山灰や軽石の層が、波打つようなしま模様を幾重にも描く。あまりに見事なバウムクーヘンぶりから、島の人も観光客も「バームクーヘン」の愛称で呼ぶ。道路工事の際にたまたま掘り出された断面で、火山の島・大島の成り立ちをそのまま壁一枚に閉じ込めたような、自然の地学教科書だ。