高速バスで苗場へ 清津川沿いの雪見露天と飯山泊
旅のはじまりは池袋の高速バス。事故やら渋滞やらでなかなか進まない窓の外は、沼田のあたりでもう山が白くなってくる。そして三国トンネル——隣で新トンネルの工事がすすむなか、この一本をくぐるためだけに来たようなものだ。抜けた先は、バス停も埋もれるほどの雪国だった。
憧れの苗場プリンスホテルをちらりと拝んでから、バスで清津川沿いの貝掛温泉へ。源泉は三十七度というぬるさで、雪見露天には上からぼとっと雪が落ちてくる。目によく効く湯だというから、視力が百万まで回復した気分。池の錦鯉まで、ちゃっかり湯につかっていた。
越後湯沢から飯山線に揺られ、猫つぐらで知られる栄村の森宮野原を経て、信州・飯山へ。着いたとたんに雨がぽつり。それでも、仏壇屋と寺のならぶ寺町の雁木の灯りは、濡れた石畳にうつってしっとりと美しい。夜は胡桃のきいた笹寿司で、ようやくの晩ごはんにありついた。
三国峠とトンネル
新潟と群馬の県境・三国峠をつらぬく三国トンネルは、国道17号の難所をむすぶ一本。開通は1959年で、関東から雪国・越後へ抜ける大動脈だった。旅のころは、すぐ隣で新しいトンネルの工事がすすんでいた。川端康成『雪国』の「トンネルを抜けると雪国であった」のイメージそのままに、峠のこちらと向こうで景色ががらりと変わる。
地獄谷のスノーモンキーと長電ゆけむりで須坂へ
朝ごはんは、みそ味のおやき。長電バスに乗って、木島線の廃線跡を横目に中野へ向かう。雪はもう湿って柔らかく、まちはどこか春の気配。ブロードウェイ(と呼びたくなる中央通り)を冷やかしてから、いよいよバスでスノーモンキーへ。乗客の半分近くが外国人という人気ぶりだ。
雪の山道を片道二十五分、たどり着いた地獄谷野猿公苑。いた——湯につかる猿。気持ちよさそうな顔、湯のふちを走り回る子猿、ロープにぶらさがる若猿。サラリーマンより幸せそうな猿たちを、しばし無心でながめる。下山して渋温泉へ向かうも、外湯は宿泊者の手形がないと入れないルールで、猛吹雪のなかどこにも入れず(´;ω;`)。
湯田中で腹ぺこをパンでしのぎ、長野電鉄の特急ゆけむりに乗る。小田急ロマンスカーの生まれ変わり、展望席からは雪景色が流れていく。降り立った須坂は蔵の町。杉玉さがる酒蔵や、見事な鏝絵をぶらついて、ご当地のみそオムライスを大盛りでかきこむ。長野からロマンスカーをもう一本、新幹線で東京へ——雪と湯けむりの二日間が、おなかいっぱいで終わった。
地獄谷のスノーモンキー
長野・山ノ内町の地獄谷野猿公苑は、温泉につかるニホンザルで世界的に知られる。噴気と熱泉が地面から立ちのぼる谷あいで、1960年代から猿が人工の湯だまりにつかるようになった。真っ赤な顔で湯にひたり、毛づくろいをし、子猿が湯のふちを走り回る——その姿を一目見ようと、冬は海外からの客で山道がにぎわう。公苑まではバス停から雪道を片道二十五分ほど歩く。