← 一覧
蝋梅と繭の里へ
GUNMA & KITA-MUSASHI · 2022 まふゆ

蝋梅と繭の里へ

からっ風の群馬・北武蔵を、東武線で。冬の一泊旅。

2022.1.29 ▶ 1.30

Days2日間
Dist約189km
Area群馬・埼玉
Top最高 335m

一月の群馬は、赤城おろしのからっ風がどこまでも吹き抜ける。まだ暗い浅草から東武線に乗りこんで、まずは太田の藪塚へ。石切場跡をのぞき、冬眠中のヘビセンターは横目に通り過ぎる。

桐生でバスに乗り換え、桐生川をさかのぼった先の梅田湖畔に、ちょうど蝋梅(ろうばい)が咲きそろっていた。半透明の黄色い花びらから、甘く澄んだ香りが流れてくる。織物の町・桐生のノコギリ屋根、群馬名物のおっきりこみ、巣ごとの蜂蜜——「かかあ天下」の国を味わって伊勢崎に泊まる。

翌日は利根川を渡り、田島弥平旧宅の養蚕集落から、渋沢栄一の生まれた血洗島へ。赤レンガと繭蔵、深谷ねぎと煮ぼうとう。絹と煉瓦の記憶をたどった、まふゆの北関東二日間。

1
DAY 1 · 01.29

藪塚・桐生で蝋梅鑑賞し伊勢崎泊

旅のはじまりは、まだ暗い浅草駅。反対方向の列車に乗りかけるハプニングをくぐり抜け、特急りょうもうで北関東へ。東京は曇り空でも、電車が進むほどに空は晴れていく。太田の藪塚で降りれば、スネークセンターのヘビはみんな冬眠中——かわりに、ひんやりとした石切場跡をのぞき、いまは冷泉になったという温泉神社に手を合わせた。

桐生に出て路線を乗り継ぎ、バスで桐生川をさかのぼる。たどり着いた梅田湖の湖畔には、蝋梅がちょうど見頃。水辺にほころぶ蝋梅はめずらしいそうで、半透明の黄色からは、甘く澄んだ香りがただよってくる。昼は群馬名物のおっきりこみ。幅広の麺とたっぷりの具で、冷えた体がじんわりほどけた。

桐生川ダムをながめ、織都・桐生のノコギリ屋根や明治館のモダン建築を横目に、夕方には伊勢崎へ。宿に荷をほどき、夜はベイシアで地のものを少しずつ。肉の日の上州牛に、巣ごと切り出した蜂蜜は額縁に収まった絵のよう——さわやかで酸味のある、できたての花の味がした。

移動 約139.1km / 獲得標高 392m

蝋梅(ろうばい)

冬のさなか、葉のない枝に半透明の黄色い花をつける、ロウバイ科の落葉低木。花びらがまるで蝋細工のように透き通って見えることから、その名がついたという。甘く澄んだ芳香が特徴で、まだ寒い季節を彩る数少ない花だ。桐生川の上流・梅田湖のほとりには群生地があり、水辺に咲く蝋梅は全国でもめずらしい。近くにはミツマタも植えられ、三月にはまた別の表情を見せるという。

2
DAY 2 · 01.30

境島村・血洗島の養蚕の里から深谷・本庄へ

朝は、ゆうべの蜂蜜をヨーグルトにかけて。境町駅で降り、赤レンガ倉庫やレトロな湯屋ののこる町並みをぶらり。やがて利根川を渡ると——県境を越えても、まだ群馬。かつて島と対岸を結んだ島村渡船は、いまは休止したままだった。

廃校が案内所になった一角に、世界遺産の構成資産・田島弥平旧宅が静かに建つ。養蚕そのものより、蚕の卵(蚕種)を売っていた家だという。風通しのための越屋根をいただいた堂々たる屋敷で、案内のおっちゃんは蚕の話よりも、赤城おろしのからっ風の話をいちばん嬉しそうに語った。

県境を越えて埼玉へ。白菜とネギの畑のあいだを歩き、血洗島——新一万円札の顔・渋沢栄一の生まれた里へ。酒蔵をのぞき、渋沢も好んだという幅広麺の煮ぼうとうで温まる。道の駅で深谷名物のフライをほおばり、本庄では繭を納めた煉瓦倉庫をたずねた。絹と煉瓦の記憶をたどって、冬の旅を閉じる。

移動 約49.7km / 獲得標高 131m

田島弥平旧宅と養蚕の里

利根川沿いの伊勢崎市境島村は、幕末から明治にかけて養蚕で栄えた集落。田島弥平は、良い蚕を育てるために風通しを重んじた「清涼育(せいりょういく)」を確立し、屋根の上に換気のための越屋根(やぐら)をのせた養蚕住宅を生み出した。その原型となった田島弥平旧宅は、富岡製糸場とともに世界遺産「富岡製糸場と絹産業遺産群」の構成資産のひとつ。周囲には同じ越屋根の屋敷がいくつも残り、いまも人が暮らしている。