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厳冬の津軽、ストーブ列車紀行
TSUGARU IN DEEP WINTER · 2022 真冬

厳冬の津軽、ストーブ列車紀行

夜行バスで北へ。雪のローカル線と、冬に咲くさくら、津軽海峡冬景色。

2022.1.7 ▶ 1.11

Days5日間
Dist約929km
Area青森・津軽
Top最高 164m

一月、日本列島をこの冬いちばんの寒波が覆った週末。夜行バスに乗りこんで、南の島帰りの体をそのまま北国へ運んだ。目覚めれば窓の外は一面の雪——津軽は、ここ二十年で最も雪が多い冬を迎えていた。

弘南鉄道と津軽鉄道、二つのローカル私鉄を乗り継ぎながら、黒石のこみせ通り、朝風呂の温湯温泉、雪の夜に咲く弘前の冬の桜、凍てつく十三湖、ストーブ列車の走る太宰のふるさと金木、そして本州の北の外れ・龍飛崎へ。雪に埋もれた無人駅、湯けむり、炙ったスルメの匂い、絶唱した「津軽海峡・冬景色」。ツルツルの雪道に何度も尻もちをつきながら、まんぷくで凍えた、冬の津軽をめぐる五日間の記録。

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DAY 2 · 01.08

黒石・温湯温泉、弘南鉄道と冬の桜

夜明け前の弘前に降り立つと、津軽はもう雪の底。これはどのくらいで積もったのか、と地元の人が笑うほどの大雪だ。晴れた朝の放射冷却に震えながら、まずは六十年ものの車両が走る弘南鉄道で黒石へ。朝いちばんに向かったのは温湯温泉——内湯を持たない客舎が共同浴場をぐるりと囲む、珍しいつくりの湯の町だ。夜行バスの疲れを、仄かに硫黄の香る湯にほどいた。

黒石のこみせ通りは、雪や日差しを避ける木造のアーケード・雁木が連なる古い町並み。造り酒屋の軒先にはクソデカい杉玉がさがる。お昼は名物のつゆ焼きそば——焼きそばをひとしきり食べてから、そこへ汁をかけるのが流儀だ。午後は弘南鉄道の一日券を手に、平賀で日本一の扇ねぷたを見上げ、津軽大沢の車庫をのぞき、雪に深々と埋もれた無人駅をひとつずつ巡った。

日が暮れて、弘前へ。青森銀行記念館や旧弘前市立図書館といったレトロな洋館を抜け、弘前公園の冬の桜ライトアップへ。葉を落とした桜の枝に積もった雪を、淡いピンクの光が染め上げる。雪の夜に、春の幻がぽっと咲いていた。

移動 約92.9km / 獲得標高 276m

ストーブ列車と津軽のローカル私鉄

津軽には、大手に属さない私鉄が二つ元気に走っている。弘前と黒石・大鰐をむすぶ弘南鉄道と、津軽五所川原から津軽中里へ向かう津軽鉄道だ。どちらも豪雪地帯を走るため、古い電車や除雪車が現役で活躍する。とりわけ津軽鉄道は、冬にだるまストーブを据えた「ストーブ列車」を走らせることで知られ、客は車内で炙ったスルメを肴に地酒をあおる。雪景色のなかをコトコト進む、暖かくて煙たい冬の名物列車だ。

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DAY 3 · 01.09

凍る十三湖と、ストーブ列車でゆく太宰のふるさと

五所川原から朝いちのバスで、凍てつく十三湖へ。地元のおっさんが「もうこんなに凍ってる」と手で厚さを示すので、恐る恐る湖面へ踏み出したら——片足が見事に水没(´Д`)。凍傷になりかけの足を引きずって、湖畔のわか山でしじみ定食にありついた。和歌山という屋号は店主の名が若山専太郎さんだからで、紀州とは関係ないらしい。しじみが多すぎて、バスの時間ギリギリまでかかった。

市浦でバスを乗り継ぎ、津軽中里から、いよいよ津軽鉄道のストーブ列車に乗りこむ。だるまストーブは一両に二つきり。濡れた靴下を乾かしたくてストーブに近い席を狙ったのに、人が増えてじわじわ遠ざけられる悲しみ。それでも炙ったスルメと地酒の匂いが車内に満ちる、これぞ冬の津軽の名物列車だ。

降り立った金木は、太宰治のふるさと。生家の豪邸・斜陽館を仰ぎ、産直メロスを冷やかし、金木八幡宮に雪を踏んで参る。喫茶店を兼ねた赤い屋根の芦野公園駅では、吹雪のなかを走れメロス号が滑りこんできた。夜は中里の民宿へ。田舎のばあちゃんちのような部屋で、石蛸やめかぶの家庭的な夕食にほっとした。

移動 約107.0km / 獲得標高 136m

太宰治と斜陽館

金木は、小説家・太宰治(本名・津島修治)の生まれ故郷。生家は、大地主だった父が建てた和洋折衷の豪邸で、いまは「太宰治記念館 斜陽館」として公開されている。れんが塀をめぐらせ、米蔵まで備えたその規模は、太宰が後ろめたさを抱えるほどの資産家ぶりを物語る。町には代表作にちなんだ「産直メロス」など太宰ゆかりの名が点在し、雪に沈む静かな町が、文豪を生んだ土地であることをそっと伝えている。

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DAY 4 · 01.10

本州の北の外れ・龍飛崎と、青森の夜

最終日の朝、陽気な女将さんのおしゃべりに見送られて宿を出る。今別から龍飛へ向かうバスはとうに廃止され、乗合タクシーがその代わり。龍飛まで行くという客は初めてだと運転手に驚かれた。奥津軽いまべつ駅で硬めの餅の小豆おやつをつまみ、三厩を経て、二度こけて尻もちをつきながら本州の北の外れへ。

龍飛崎では、ボタンを押すと超爆音で「津軽海峡・冬景色」が流れる歌謡碑の前で、思いきり絶唱。名高い階段国道は雪のため通行止めで、ザコすぎると笑う。龍飛埼灯台に立ち、帯島に上陸し、風の強い岬で手がかじかむ。晴れてきた海の向こうには、北海道までくっきり見えた。

津軽線で青森へ戻り、〆はおさない食堂のホタテフライ定食と田酒。こんなに歯ごたえのあるホタテフライは初めてだ。まちなか温泉で雪の旅を流し、長尾中華そばで津軽の煮干しラーメンを——と思ったら、あっさりを頼んだら全然煮干しじゃなかったのはご愛敬。夜行バスに揺られ、雪と氷に震えた津軽の旅を、東京へと持ち帰った。

移動 約150.9km / 獲得標高 286m

龍飛崎と津軽海峡冬景色

津軽半島の北西端、津軽海峡に突き出す龍飛崎(竜飛岬)は、晴れれば対岸の北海道を望む本州の北の外れ。強い西風で知られ、すぐそばには車が通れない「階段国道339号」という全国でも珍しい国道がある。岬に立つ石川さゆりの「津軽海峡・冬景色」歌謡碑は、ボタンを押すと大音量で曲が流れる仕掛け。真下には青函トンネルが走り、龍飛は海の底を列車が抜けていく、本州と北海道の結び目でもある。