伊達の里から、湯の町・飯坂へ
朝からビールで「いくぜ東北」。白河からバスを乗り継いで伊達の里に降り立つと、掛田の古い町並みには、かつて養蚕で栄えた名残の町家がどっしりと残っていた。眺めがいいと聞いて山に登ったら、山頂より途中のほうがよほど眺めがよかった——そんな寄り道も旅の味。色づくもみじに懸田城跡、龍岡神社。石造りの立派な蔵がならぶのは、この辺が石の産地だからだろうか。
神社やお寺の銀杏はどこも燃えるような黄金いろ。バスがなかなか来ないので保原までてくてく歩き、駅前食堂のカツカレーで腹ごしらえ。日が暮れてたどり着いた飯坂温泉は、側溝からも湯けむりの立つ古い坂の町。鯖湖湯の灯り、餃子の照井の長い行列、あちこちの温泉むすめ。ギリギリ熱い湯に真っ赤になって、晩秋の湯の町の夜はしんしんと更けていった。
飯坂温泉と共同浴場
奥州三名湯のひとつに数えられる、千年を超える歴史をもつ古湯。松尾芭蕉も「奥の細道」の道中でこの地に泊まっている。坂の多い温泉街のあちこちに、鯖湖湯・八幡の湯・大門の湯といった小さな共同浴場が点在し、地元の人々の暮らしの湯として生きている。泉質は無色透明のやわらかな湯だが、「入れるかどうかギリギリ」というほど熱いのが飯坂流。観光客が湯もみしてためらう横で、地元の常連はさらりと浸かっていく。
朝もやの湯の町から、宇宙のまちへ
朝の飯坂はまだ霧の底。そこら中の側溝から湯けむりが立ちのぼるなか、熱い切湯でチェケラッチョして、愛宕山にのぼれば福島盆地は一面の朝もや。霧か、雲海か——言い出したらきりがないけれど、とにかく絶景。温泉むすめのパネルを見送って、週末パスでタダ乗りできる福島交通とアブQ(阿武隈急行)を乗り継いでいく。
梁川の称名寺では、見あげるほどの大イチョウ。角田では駅前の光華飯店で黒ラーメンと焼きめしをかきこみ、「さらば地球よ」と宇宙のまちのロケットタワーにのぼる。大河原で元祖の銘菓を手に入れ、たどり着いた亘理では——初めて食べたいと思ってから十五年、ようやく念願のはらこめしにありついた。満ち足りて、常磐線の特急で夜の帰路についた。
週末パスとアブQ
JR東日本の「週末パス」は、南東北から関東・甲信越までのフリーエリアが乗り放題になる土日祝向けのきっぷ。JRだけでなく、福島交通飯坂線や阿武隈急行(通称アブQ)といった私鉄・三セクにもそのまま乗れるのがうれしい。福島盆地と宮城・丸森をむすぶ阿武隈急行は、阿武隈川に沿って里山をぬうローカル線。無人駅を乗り降りしながらの、のんびりした途中下車の旅にうってつけだ。
角田とロケット
宮城県南の角田市には、JAXA角田宇宙センターがあり、ロケットエンジンの研究開発がおこなわれてきた「宇宙のまち」。市の台山公園に建つスペースタワー・コスモハウスには、日本の主力ロケットだったH-IIの実物大模型がそびえ、タワーの展望室からは角田の町と阿武隈の山なみが一望できる。「さらば地球よ」と口ずさみたくなる、ちょっとした宇宙旅行気分が味わえる。