取手の小堀の渡しと手賀沼・温泉めぐり
日帰りの行き先は、千葉と茨城のさかいめ。まずは我孫子の弥生軒で、どんぶりからはみ出すジャンボ唐揚げそばをかきこんで、旅のエンジンをかける。電車を乗りついで利根川を渡れば、青空に「取手市」の看板——あっけなく茨城上陸だ。
お目当ては、取手市が運営する公営の渡し舟「小堀(おおほり)の渡し」。一時間待ちの行列にならび、待合所の「自由にどうぞ」の福来みかんをひとつもらって、台湾ビールでゆるゆる船を待つ。やってきた連絡船の舳先はまっ赤。川風を切って古利根沼をわたれば、水面に雲が流れ、奥には常磐線の鉄橋がかかる。たった数分の船旅が、妙に贅沢に感じられた。
渡ったあとは、取手の宿場町をぶらり。名産の奈良漬を新六本店で買いこみ(地酒もねらったけれど、隣の酒蔵はあいにくお休み)、長禅寺の山門をくぐる。旧取手宿本陣・染野家住宅の堂々たる茅葺き屋根に見とれ、丸ポストの立つ台宿坂をくだる。「取手にこんな賑わう観光地があったんだ」と、何度でも見直してしまう一日。
日が傾くころ、手賀沼のほとりへ。黄金色の葦原、水鳥、暮れていく空——橋の反対側に渡りそこねてマジックアワーを逃した……と思ったけれど、じゅうぶんすぎるほど綺麗だった。しめは満天の湯の濃い温泉と、伊達焼きそばに自家製厚揚げ。地味だなんて誰が言った、と胸を張りたくなる、水辺づくしの帰り道。
小堀の渡し
取手市が運営する、全国でもめずらしい公営の渡し舟。利根川と古利根沼をこえて、取手の市街と対岸の小堀(おおほり)地区をむすぶ。もともと小堀は取手側と地つづきだったが、明治期の利根川の改修で流路がつけ替えられ、集落が川の南側に取り残されてしまった。以来この渡し舟が、住民の暮らしをささえる大切な足として、いまも運航をつづけている。毎週水曜が定休で、自転車もそのまま乗せられる。
弥生軒と唐揚げそば
我孫子駅のホームでおなじみの立ち食いそば「弥生軒」。名物は、どんぶりをおおいつくすほど大きな鶏の唐揚げをのせた唐揚げそばで、ひとつでもずっしり、ふたつ頼む猛者もいる。じつはこの店、放浪の画家・山下清が若いころに下働きをしていたことでも知られ、店にかざられた絵のルーツをたどると、そんな物語に行きあたる。天王台駅にも店をかまえている。