夜に前橋到着、東横イン泊
旅のはじまりは、金曜の夜の前橋。駅前の東横インに荷をほどく。窓の外にただよう群馬の夜気を感じながら、明日はいよいよ赤城山だと、早めに眠りについた。
赤城山登拝とわたらせ渓谷鐵道トロッコ
まだ暗いうちに前橋駅前へ。エキータ跡は再開発の真っ最中だ。バスで山をめざすと、富士見温泉のあたりでもう眺めが抜群で、群馬が大都会に見えてくる。ところが赤城山頂に着くと、晴れの予報はどこへやら——かすかに降りだした雪が、みるみる吹雪に変わっていく。手袋を忘れたことを心底悔やみながら、大沼のほとりの赤城神社へ。雨上がりでもないのに、空には立派な虹がかかった。
覚満淵のほとりをぬけ、かつて山上まで通っていた赤城登山鉄道のケーブルカー跡を、ひたすら石段で下る。御神水の湧くあたりでケーブルの跡は途切れ、その先は登山道。利平茶屋の駅跡に出ても、まだ駅まで十キロ。熊の気配におびえつつ渡良瀬の谷まで下り、水沼駅からわたらせ渓谷鐵道のトロッコに乗りこんだ。国鉄12系と京王5000形をつないだ、ゆかいな編成だ。
のこぎり屋根の工場が残る機織りのまち、桐生に到着。夕焼けに染まる町に見とれつつ駅近くのホテルに投宿して、ひとっ風呂。夜はお通しからメインまで、群馬のもつ煮文化を肴にビールで一日をねぎらった。
赤城山と大沼
赤城山は、裾野の広さが日本一ともいわれる群馬のシンボル的な火山。火口原には大沼(おの)・小沼(この)といったカルデラ湖がひろがり、大沼のほとりの小鳥ヶ島には朱塗りの橋を渡って赤城神社がまつられる。かつては山上の大沼近くまで赤城登山鉄道のケーブルカーが通い、参詣や観光でにぎわったが、1968年に廃止された。標高千四百メートルの山頂は、十月下旬でも雪が舞うことがある——「そら赤城山、12月の天気」とは、まさにこの日のこと。
上毛電鉄と前橋の城跡めぐり、徒歩で群馬県庁へ
宿を出て、レトロな西桐生駅から上毛電鉄(じょうもうでんてつ)に乗る。小豆色の車両は、もとは京王井の頭線を走っていた電車。膳駅で降りて膳城の堀跡をたどり、山上多重塔や近戸神社の室町時代の狛犬をのぞく。昨日とは打って変わった雲ひとつない青空の下、浅間山には雪が光っていた。
「殿様のブランチ」は、群馬名物の焼きまんじゅうときのこ汁。大胡城の城跡から駅へ下りると、創業当初から走り続ける古い電気機関車がお出迎え。荻窪の温泉であたたまり、道の駅の風車を横目に、前橋の里をひたすら歩く。おやつはソフトクリーム、気づけばこの日だけで三十キロ。
日が傾くころ、遠くに「世界の中心」群馬県庁のタワーを望みながら、道の駅ふじみへゴール。榛名と妙義のシルエットに筋雲がかかって美しい。温泉で足をのばし、チャーシューとビール、もつ煮のおつまみで乾杯。最後のバスに間に合うかというスリルを味わいつつ、赤城の大鳥居を抜けて、無事に帰路についた。
上毛電鉄と城跡の里
上毛電気鉄道は、桐生の西桐生駅から前橋の中央前橋駅までを結ぶローカル私鉄。小豆色の主力車両700形は、もと京王井の頭線の電車で、中間車を改造して走っている。沿線の大胡(おおご)には車庫があり、1928年の開業当初から在籍する電気機関車デキ3021が、いまも大切に保存されている。終点の西桐生駅は昭和初期の洋風駅舎で、国の登録有形文化財。沿線の膳城・大胡城はいずれも中世の城跡で、天守や石垣こそ残らないが、堀や土塁に戦国の面影をとどめる。